川口さん、バッグ入選を報告

賞状を手に笑顔の川口さん(嘉渡自宅で)

全国伝統的工芸品公募展
大島紬の新しい表現評価

 一般社団法人伝統的工芸品産業振興会が主催する「2020年度全国伝統的工芸品公募展」でこのほど、龍郷町嘉渡在住の伝統工芸士・川口美喜枝さん(69)が本場大島紬の糸で制作した「奄美の黒うさぎバッグ」が入選を果たし、13日報告した。大島紬の新しい表現が評価。川口さんは「娘と一緒に作った作品が入選。これまでで一番うれしい」と喜んだ。

 公募展は、伝統的技術・技法に現代生活で使われる新しいアイデアや表現を取り入れた市場性のある作品を公募し、魅力ある製品の開拓につなげることが目的。45回目の今回は全国から254点の応募があり、117点が入選した。

 川口さんは今年度、入選した同バッグとルリカケスを描いた「大島紬の名古屋帯」の2点を応募。バッグは今月7日まで東京の国立新美術館で展示され、18日から1月7日までは東京都港区の伝統工芸青山スクエアでの展示も決まっている。

 織工を営む両親の影響で18歳から大島紬の製造に携わってきた川口さんは、1980年ごろに織物の本場大島紬・意匠部門で伝統工芸士に認定。10年ほど前に体調をくずし職場を辞めてからは、自宅の小型の織り機を使って小物作りに励むなど、技術をつないできた。

 入選のバッグは、一本一本にくずす前の太めの紬の糸を使って制作。いったん織り上げてから娘の美香さんが絵を描いてからまた織り直すという大島紬の工程を踏襲。同じ過程にこだわり、約4カ月かけて仕上げた。

 自宅で制作を始めてからは近くで採取した草木や海藻なども使ってオリジナリティあふれる創作活動を続ける川口さん。「アイデアを出しながら織っている時が一番楽しい。これからも奄美の自然や地域の素材などにこだわり、みんなが喜ぶような作品を作りたい」と意気込んだ。

 なお同公募展では、奄美市のたけがわ織物の作品「たんじょう」も入選を果たした。