西康範さんが湯湾岳で撮影した「ヤクシマツチトリモチ」
薄暗い山中に真紅の小花
12月に入り降雨を伴う曇天続きで、日差しが降り注ぐ晴天が続かない奄美地方。少ない日照量による農作物の生育への影響が気になるところだが、奄美大島の最高峰・湯湾岳(標高694㍍)では薄暗い山中でも存在感を示す植物が姿を見せている。真紅の小花が愛らしい「ヤクシマツチトリモチ」。見頃を迎え、枯れ葉に覆われた地面から顔を出した様子を西康範さんが撮影した。
これまで「ユワンツチトリモチ」とされていたが、近年の研究により「ヤクシマツチトリモチ」と同一種とされた。ツチトリモチ科。
『琉球弧・植物図鑑』(南方新社刊)によると、鹿児島県本土(大隅半島)・屋久島・種子島・奄美大島に分布。イスノキやクロバイなどの根に寄生する雌雄別株の寄生植物、雄株は発見されていない。奄美のツチトリモチの寄生樹はイジュが多いとされている。
花茎は短く、花は球形~卵状短楕円形。「本州から九州にかけて分布するツチトリモチよりも、(奄美大島に自生するものは)全体的にずんぐりした感じを受ける」(『琉球弧・植物図鑑』。西さんは12日に湯湾岳に登り、雨は降ってなかったものの肌寒さを感じる中で撮影。西さんは「咲いている数が少ない印象だった。このところ降雨が続いているだけに、枯れ葉が雨水で流れてかぶさってしまい、なかなか見つけることができないのかもしれない」と語った。