年末回顧②

奄美群島の自治体としては最も早く、特別給付金の支給が開始された大和村で、10万円の支給を受ける住民ら(大和村大棚集落)

「コロナ対策」
様々な支援策も先行き見えず

 奄美群島の島々でも感染が相次いだ新型コロナウイルス。国や県、各自治体では感染拡大の防止や経済対策などを次々と打ち出した。しかし、世界的な感染拡大(パンデミック)を防ぐことはできず、1929年に始まった大恐慌以来ともいわれる未曽有の経済危機に見舞われる結果となった。外海離島の奄美でも、医療体制の脆弱さが浮き彫りとなり、地域経済への影響を懸念する声も日に日に大きくなっていった。各自治体では、独自の対策などに取り組んでいるが、感染の拡大と長期化により、先行きが見えない状況が続いている。

 【来島自粛】

 政府が緊急事態宣言を出した4月、奄美大島では、島内5市町村の首長で組織する「奄美大島新型コロナウイルス感染症対策本部会議」を設置、会長に就いた朝山毅奄美市長は「奄美大島から感染者を出さない」として、東京、大阪、福岡など緊急事態宣言の対象地域からの来島自粛を呼び掛ける共同メッセージを発表した。7月には、警戒レベルを5段階に分けた、新たな行動指針を策定、その後、奄美群島の12市町村でも同様の指針を共有していくことになった。徳之島や沖永良部でも自治体の垣根を超え、島ごとに協力体制を構築、感染対策が実施されている。

 【特別給付金】

 政府はこうした経済危機に対応するため、リーマン・ショック後の対策を上回る巨額の支出で家計と企業を支援。国の直接支出は約30兆円に上り、民間を含めた総額の事業規模は約73兆円にも上っている。

 5月には、緊急経済対策として、国民すべてに現金10万円を一律給付する「特別定額給付金」の支給がスタートした。奄美では、大和村が地域の公民館などで住民らに現金で給付する形でいち早く開始、その後、奄美市などすべての自治体で実施された。このほかにも、子育て世帯への給付金や緊急小口資金の貸し付け、国民健康保険料や介護保険料の減免など様々な支援策が行われた。

 また、各自治体でも臨時交付金を活用した様々な支援策が実施された。奄美市では市民1人当たり5千円の商品券配布や飲食店向けのプレミアム商品券なども発行された。11月1日に発売された商品券「ほーらしゃ券」は、販売所となった市内の店舗前に長蛇の列ができるなど予想を上回る売れ行きとなり、即日完売する人気ぶりだった。

 【事業所支援】

 収入が減り、資金繰りに窮する中小企業を支援するため、返済の必要がない持続化給付金や実質無利子の融資制度、納税猶予などの企業支援策も実施された。

 奄美市名瀬の奄美大島商工会議所では4月10日、困窮する事業主らを対象に、給付金や融資に関する相談会が実施された。同商議所では特別窓口を設置、相談に応じるなどした。

 しかし、奄美群島で感染者が確認されると、地域の経済活動は一段と制約される事態となり、飲食店やホテルは次々と休業に追い込まれ、幅広い業種の中小・小規模事業所の経営が危機的状況に陥った。

 また、県内の感染拡大を受け、県は4月25日~5月6日までの12日間、休業や営業時間の短縮を要請、協力した中小企業に20万円、個人事業所に10万円の協力金を支払うなどの対策を行った。

 感染が拡大すると、デマを発端とする飲食店への風評被害や中傷がSNSや口コミで広がった。また、飲食店では、観光客など島外からの来客を断る店舗も増えるなど、「ソーシャルディスタンス」(社会的距離)の確保が求められる一方で、偏見などの問題も指摘された。

 【PCR検査】

 感染者の受入治療を担う群島内の感染症指定医療機関は県立大島病院のみで、奄美大島以外の離島には指定医療機関がないことも課題となっている。

 PCR検査も当初は、県本土のみで実施しており、濃厚接触者については、検体を輸送するため、悪天候によって飛行機が欠航するなど、感染確認に1日以上要するケースもあった。

 県は8月、奄美市名瀬のホテルを軽症者受け入れのための宿泊施設として利用開始。与論島や徳之島でのクラスター発生時には、多くの軽症者を受け入れ、感染対策に大きな役割を果たした。

 10月には県立大島病院にPCR検査機器1台が導入され、島内で検査できる体制ができた一方、検査キット不足により、1カ月で検査できる数が10人分に限定されるなど、まだまだ十分とは言えない状況が続いている。

   ◇   ◇

 新型コロナ感染の収束の見通しが立たない状況が続いている。企業にとってはまだまだ、厳しい経営環境も変わりなく、持続化給付金などの支援が必要となる企業は、今後も増えることが予想される。

 4月1日に和泊町で奄美群島初の感染が確認されて以降、与論島や徳之島でのクラスター(感染者集団)発生、感染者が増えるなか、感染者のほとんどが自衛隊のヘリや海保の航空機などで連日、県本土や奄美大島の指定医療機関に搬送されることとなり、離島の医療体制の脆弱さを改めて認識させられた。
(赤井孝和)