円小学校の授業を観察後、行動を分析する龍北ブロックの教員
龍郷町教育委員会は20日、同町円小学校でIR研究を開いた。IR研究とは、複数の学校をブロック分けして、ブロックごとの課題設定をもとに各学校を訪問。小中学校の連携強化と、「子ども」の視点に立って、対象授業を観察・分析することで、授業力の向上を図ることを目的とする。この日は今年度最終日。町内4校(円・秋名・龍郷=小学校・龍北中学校)から8人の教員が訪れ、国語の授業を対象に研究を行った。
同研究は、鹿児島大学の学術研究院・廣瀬真琴文学博士を中心に、6人の研究者が全国で実施している。もともとは米国ハーバード大学の研究者らが医療の現場で活用するために開発した仕組み。「子どもの視点に立つ」ことと、小中学校の教員同士(横)、義務教育9年間(縦)のつながりを強化する狙いがある。また、子どもの視点に立つことで、授業内容や教員の批評ではなく、前向きな解決策を提案できる点が期待できるという。
龍郷町では、今年度から取り組みを開始。町内のすべての小中学校(10校)を三つのブロック(中学校区の龍南・龍北・赤徳)に分け、互いの学校を訪問しあった。廣瀬文学博士によると、町内すべての学校が連携して開催したのは同町が初めてだという。合計で町内の教員の9割以上の94人が参加した。
課題は各ブロック、学校ごとに設定される。龍北ブロックでは「主体的に解決していく子ども」とし、円小学校は国語の授業を通して三つの「育みたい児童生徒の姿」を決めた。
研究は①情報確認②観察・記録③分析④推測―の四つの項目に分かれて実施。まず参加者が課題設定などの情報を共有した上で、実際の授業を見て子どもの行動を観察・記録する。その際の注意点は、「評価」や「推測」をせず「事実」のみ見ること。その後は教員同士で付箋に行動を書き出し、グループ分けを行い分析。最後に子どもの視点に立って「なぜその行動を取ったのか」を推測した。
龍北ブロックでは、二つのグループに分かれて分析と推測を実施。授業中の発言やしぐさ、ノートに書かれていたこと、視線の方向まで事細かに児童の行動を書き出し、課題を明確化。その後は同学校に対する課題解決のための「展望」を示し、終了した。
研究に3回参加した龍郷小学校の末松雅之校長は「子ども視点に基づく考えが新鮮だった。課題が明確化する実感を得たので、今後の授業に生かしていきたい」。円小学校の青木加納子教諭は「自分では気付かなかった課題や解決法を得た。明日から実践できたら。縦横の垣根を超えた先生方とのつながりが心強い」と話した。
同取り組みを担当した龍郷町教育委員会指導主事の宮崎憲一郎さんは「回を重ねるごとに意見交換が活発になり、互いの知恵(資源)を共有することができたのでは。各ブロックごとに同規模校だったため、課題や利点を共有しやすく、解決に向けた話し合いがスムーズだった。各学校のフィードバックを受けて、今後も開催していけたら」と期待した。