マイクの前で台本を夕読みする海斗くん(手前)と大和くん(28日、上嘉鉄東集落公民館内)
喜界町の上嘉鉄集落では、夕暮れ時になると小学生児童による島口夕読みが集落放送されている。
「うがみんせーら、にゃまから 夕読み放送せーら」(こんばんは いまから夕読み放送をします)。
地域児童が午後5時40分、島口による狂言演目「附子=ぶす=」を朗読。冒頭のあいさつの後、元気な声が集落の公民館放送室から響き渡る。
「附子」は狂言として一般的に知られている演目の一つ。登場する主人、太郎冠者と次郎冠者の3役、語り手を分担し、児童がシナリオの8場面を読み上げた。1場面当たりの朗読時間は5分程度だ。
上嘉鉄集落は3地域(東・中・西)あり、夕読みする児童は住んでいる地域の公民館から放送。今年1月4日から28日までに地区交代で毎日1場面ずつ朗読した。28日は同東集落の福村大和=やまと=くん(喜界小6年)と弟海斗=かいと=くんが担当。一緒に朗読した後、「すーやー うまーとぅー(きょうはここまで)」と結んだ。
同集落では昨年、子ども狂言の舞台発表を予定していたが、コロナ禍で今年2月下旬に延期。それを前に集落有志が舞台度胸をつけてもらおうと、台本の夕読みを考えたもの。
島口の伝承活動に取り組む「ハティトゥユムタ語ろう会」(大友照子会長)、喜界島言語文化保存会(生島常範代表)が子どもたちを指導。団体関係者によると、住民はその昔、各家庭で行われていた「夕読み」を懐かしみ、放送時間を待ちわびているお年寄りも少なくなかったという。
同東集落の安藤和久区長は「指導役や集落、保護者の協力を受けている夕読みを応援していきたい」と活動に理解を示した。
8日間の夕読みを終えた福村兄弟は、「島の言葉をもっと覚えて、周囲に広めたい」(大和くん)、「言葉を教えてもらったので(夕読みを)続けたい」(海斗くん)とそれぞれ話した。