大島紬パッチワークキルト展

「奄美の神々は唄う」の前で話す黒田さん
 
 

多くの人が訪れた「大島紬パッチワーク展」後世に大島紬残すため

 

 

後世に大島紬残すため
一村美術館企画展示室で キルト作家の黒田さん

 

 
 「大島紬パッチワークキルト展」が6日~14日まで、奄美市笠利町の田中一村記念美術館企画展示室で行われている。キルト作家の黒田街子さん(68)の大島紬使用の大作品群と生徒らによる大島紬を使ったパッチワークキルトの数々の作品が会場を飾り、黒田さんの壁掛けの大作品は、目を凝らして細かな縫い目のタッチに感嘆しきり。またバッグや闘牛、テディベアなどの雑貨に、「すごく上手にできている。プロだわ」と絶賛する声も。初日の6日には「大島紬に魅せられて」のタイトルで黒田さんがギャラリートーク。「大島紬が後世に残ることが大事。多くの人に大島紬を着て欲しい」と語った。

 大島紬を使ってパッチワークキルトを作った作品は、2010年の「和のキルト100人展」に出品した「揺籃(ゆりかご)」だ。高校時代の友達が祖母の着ていた多くの大島紬を黒田さんに託した。200㍉×200㍉の大作だ。泥染基調。

 これを皮切りに2012年、キルト&ステッチショー招待で「オオワシが来る聖湖」の作品にオオワシのみを大島紬。2018年に同招待作品の「恩返し」を。「大島紬を約100種を用いて創ったキルト。悠久の時を経て届いた絹糸、種々の職人技によって昇華され、美の極致ともいえる大島紬の織物となり、その一片を鶴の飛躍に託して先人に捧げつつ未来へ届ける」と想いを綴る。

 19年には和歌山大学国際学会レセプション展示の「大島紬・歓喜の音色」。「大島紬のみで作ったキルト。ハサミを入れるたびに気を引き締め、キルティングの針の運びに苦労しながら、先人たちの想いのこもった織物と対話を続けている」と紹介。

 今回のイベントのために作った「奄美の神々は唄う」は「大島紬のみで作ったキルト。花たちは奄美大島の絶滅危惧種から10種とカンランを選び、祈りの針で描いた。どの花たちも太古の歌を唄いながら、未来の子どもたちに語りかけるでしょう」と、山下弘さん著の本から引用し、色どりを考えてデザインしている。        

 同作品のメイン部分、中央部に白色のアマミスミレ、アマミクサアジサイ、アマミトンボ、アマミイワウチワ、黄色のアマミカタバミ、ヒメミヤマコナスビ、ピンクのアマミエビネ、葉のヤドリコケモモとアマミデンダ、ユワンドコロ、ワダツミノキ、そして、紫のカンランを配している。

 2年間で完成した作品だが、「奄美に着いたら、神様がいるからできる、きっと忘れられないキルトになると思った。私の名前ではなく大島紬が後世に残ることが大事」と黒田さんは語り、今回の開催は数年前に惜しげもなく大島紬の技の工程を教えてくれた締機職人の2人と箕輪リサさんのおかげと感謝。2人の締機職人には「会期中に会ってお礼を言いたいです。ビルの中が3階までの空間がとてもステキで、職人たちもきれいだったから」と話した。

 会場には多くの人が詰めかけ、黒田さんのギャラリートークに耳を傾け、大島紬で作られた闘牛やバッグ、テディーベアに熱い視線を送っていた。奄美市名瀬の田中知亜子さん(88)は、レースの編み物などをしていたことから興味があって娘と来場。「すごい、感動しました。大島紬を使われて、こんな大作を作るなんて、よっぽど根気よくやっているわ」と熱っぽく語った。