島嶼研奄美分室から発信する宋多情研究員
鹿児島大学国際島嶼研究センターと法文学部は6日、「コロナ禍の奄美群島で教育研究をどのように進めたか・進めるか」をテーマに、インターネットのWeb会議ツール「Zoom」を使ったオンラインシンポジウムを開いた。同大の教授や准教授、研究員、学生ら12人が、今年度実施した奄美に関する研究成果など9テーマを発表。関係者含めて約60人が参加し、コロナ禍での研究の苦労や工夫を共有した。
同シンポジウムは新型コロナの影響のもとで進めてきた「世界自然遺産候補地・奄美群島におけるグローカル教育研究拠点形成」プログラムの教育研究をふり返り、今後の方向性などについて考えることが目的。
鵜川信農学部准教授は「奄美大島におけるこれからの自然環境モニタリングを考える」をテーマに発表。固有種を中心にモニタリングすることが重要で、固有種だけでなく外来種や生息環境、人為影響を含めた統合型モニタリングを行うことで、固有種の個体数減少の原因の即時検出ができるとした。また、コロナ禍で人の行き来がしにくくなり、モニタリング持続性の鍵は「地域(NPO団体)の人々の協力」と説明。楽しく、利益が出て、簡単にできるなど工夫し、研究機関、行政、地域の人々の連携を訴えた。
高山耕二農学部准教授と河合渓島嶼研教授は「電気柵によるアマミノクロウサギの農地への侵入防止は可能か?」をテーマに発表。特別天然記念物アマミノクロウサギによる農作物、特にタンカン樹の被害が深刻になっており、電気柵による侵入防止をカイウサギで実験後、徳之島の農家に伝えて406日間実験。その結果、極めて高い侵入防止効果が見られ、ワイヤーメッシュ柵より低コストだという。今後は面積を拡大し、長期間効果が持続するか検証していく。
島嶼研の宋多情研究員と藤井琢磨特任助教は「奄美群島島めぐり講演会」について発表。5島6か所で開催したが、奄美群島広域事務組合等の行政と連携し、地域のニーズを反映した講演テーマの設定、パブリックビューイング会場の設置などを行った。また、Zoom配信にオーディオインターフェイスを導入し、聞きやすくした。オンライン配信もするものの、今後も可能な限り対面(会場)で行っていくという。