創業90周年記念の社史発刊を報告する里見社長
里見海運産業㈱(本社・奄美市、里見宮寿社長)は、昨年10月に創業90周年を迎えたことを記念し、社史「奄美大島 名瀬港とともに九十年」を発刊した。約330冊を制作、同社社員や退職者のほか、行政や海運、港湾関係団体関係者らに配布する。
里見社長(59)が12日、奄美新聞社を訪れ、「多くの方々の支援、協力により会社の歩みと名瀬港の繁栄の歴史をまとめることができた」と、社史発刊を報告した。
同社は、1930年、里見宮熊氏(大和村大棚出身)が定期船の荷役業などを行う「里組」として創業、52年に現在の「里見海運産業」が設立された。社史では、50~60年代にかけ、日本復帰した奄美と米軍占領下にある沖縄を結ぶ航路などで活躍した船舶「平和丸」や名瀬港の荷役作業の様子など、貴重な写真を数多く掲載、海運業の転換期を迎えた70年代に倒産の危機に陥るなどした同社の歩みを約200ページにわたって紹介。巻末には、奄美の交通史と同社の歴史などを年表としてまとめている。
社史編纂は、今年1月、84歳で死去した同社の里見弘壽・名誉会長の肝いりで、元地元紙記者の武下宜史さん(65)らによって、19年夏から進められた。昨年10月に予定していた創業90周年記念式典で披露する予定だったが、新型コロナウイルスの影響や、里見名誉会長の死去などのため延期されていた。
武下さんは「戦後の混乱期で残された資料が少ないなか、奄美の海運業界の生き字引である里見会長の鮮明な記憶が頼りだった」と語り、里見社長は「制作の過程で、名瀬港や奄美航路の歴史など初めて知ることも多かった。先人の苦労や功績を再認識するとともに、今後も地域貢献できる会社を目指す使命感を感る機会になった」などと語り、2029年の創業百周年に向け、思いを新たにした。