渡さんと町さんのギャラリートーク

町さんと渡さんのギャラリートーク

ノロ装束を徹底解明
現存するノロの辞令書や13歳のドギン姿も

 NHK教育テレビの番組「デザインミュージアムをデザインする」と宇検村・瀬戸内町のコラボ企画「DESIGN MUSEUM BOX(デザインミュージアムボックス)展が宇検村生涯学習センター「元気の出る館」で始まっている。村が所有するハブラギンやノロ装束についてのパネル展示と世界的ファッションデザイナーの森永邦彦氏が装束に着想を得た衣装が公開展示されている。14日、両町の学芸員の渡聡子さんと町健次郎さんのノロとハブラギンについてのギャラリートークが行われた。宇検村には、シバサシギンを一年に1回広げて着物を拝むシバサシ行事が行われていること(渡さん)や、「あしゃげこむね」や高倉に残された模様はアオウミガメの骨ではないか(町さん)など、古代のロマンが広がる話題で盛り上がった。

 同イベントは、デザイナーの森永さんが瀬戸内町立図書館・郷土館に訪れる所から始まるNHK番組も紹介。ノロの衣装ハブラギンにたどり着き、衣装を製作した過程やハブラギンの展示パネル、ノロの衣装についての考察や宇検村に現存するシバサシ行事に行われる着物拝みの儀式などが徹底して紹介されている。

 ギャラリートークでは、ノロとユタの違いを「ノロは首里城から任命されるオフィシャルな女性司祭、ユタは死んだ霊を呼び悩みの解決などを行う誰もがなりうる女性」と町さんが紹介、三角形のパッチワークが施されているハブラギンは「ハブラが島の方言で蝶や蛾のことを言い、ギンは方言で衣あるいはドギン」と説明。奄美に残るハブラギンは、琉球時代に由来する伝統的なノロの信仰にかかわる道具として家々で保管。ドギン(胴衣)とカカン(スカート)を着ていたとの記録が奄美には残っていることやハブラギンの三角形は神の使いと考えてきた蝶や蛾で奄美の人々にとって霊魂と霊力があると言われてきた。

 服飾研究家によると端切れに中国の明、清代の絹糸が使用されている事から日常普段着ではなく、特別な意味を持った神衣の一つで奄美のハブラギンには三角形の意匠が布片や縫い目で施され、「二目落とし(ふためおとし)」の縫い目が見られ、「襟や袖から人間の霊が宿るのか、このステッチは諸鈍シバヤの踊り手たちの胴衣にも用いられている」と町さん。

 宇検村のノロ、ハブラギンやドギンを調べた渡さんは、阿室に残る着物拝みの行事やシバサシ、屋鈍で見られた13歳の女の子のドギンを豊年祭の中入りで紹介していたことなどを解説。あしゃげの四隅にススキをさすことや、宇検村に現存するノロの辞令書などを紹介した。
 町さんは高倉の模様やあしゃげこむねの模様はアオウミガメの骨ではないかと紹介、「自然がお手本の可能性のある島だなあ」と語り、太古の夢を森永さんが出会ってクリエイトしたと興奮気味に紹介している。

 この日、奄美市笠利町の田中一村記念美術館で講演した佐藤溯芳さんの話を聞いた後、訪れた内山初美さん(68)は「自然と環境の話題が多くて、衣服についての話はすごくうれしかった。ハブラギンのこともわかってよかった。『二つ目落とし』は、長襦袢にも使われる縫い目で、二目落としとは言わないと思った」と語った。

 2人によるギャラリートークは、21日に瀬戸内町立図書館・郷土館でも行われる。