奄美クジラ・イルカ協会(興克樹会長)は、2021年シーズン奄美大島周辺海域におけるザトウクジラ出現状況をまとめ公表した。今シーズンの出現頭数(4月16日現在)は、昨シーズン比11・2%増の670群1087頭で、「過去最多となった」としている。個体識別調査などにより、冬場の奄美・沖縄への来遊頭数自体が増加傾向にあるという。
調査結果によると、今シーズンの初出現は20年12月13日名瀬湾沖で、1月上旬から出現が多くなり、来遊のピークは2月下旬だった。1月と2月は南下群が多く、3月は北上群が多くみられた。
出現頭数について同協会は「本格的に船上調査が始まったのは14年シーズンからであり、また定量的な調査ではないため単純比較はできないが、近年、ウォッチング船の増加に伴う目撃頭数の増加を考慮しても、来遊頭数自体は増加傾向であると考えられる」としている。興会長によると奄美では戦前まで捕鯨が行われた歴史があるが、繁殖数も増加するなどこのところクジラの生息数は回復しているという。
ザトウクジラ群の構成についてもまとめている。1群の平均頭数は1・62頭で、群構成比では、母仔群が過去最多の105群出現(昨シーズンは97群)し、15・7%を占めた。水中観察から母仔群の個体識別を行ったところ、「奄美大島周辺海域で2日以上滞留していた母仔群が4群確認され、2日が2群、5日が1群、48日が1群みられた」。
繁殖や子育てのため奄美大島近海に来遊するザトウクジラを観察するホエールウォッチングへの関心が高まっているが、21年シーズン(21年1~3月)の利用者数は、同協会加盟のホエールウォッチング事業者(10事業者)合計で2895人となった。協会によると利用者は年々増加し、20年シーズンは前シーズンの1・26倍となっていたが、今シーズンは新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発出などの影響でキャンセルも多く、利用者数は昨シーズン比21・4%減と減少に転じた。ホエールウォッチング利用者のうち61・6%(1783人)はホエールスイム利用者(シュノーケリングで水面から観察しザトウクジラが泳ぐ姿を見て楽しむ)が占め、ホエールスイムの人気の高さが示される結果となった。
興会長は「(コロナ禍で)ホエールウォッチング利用者は減少したが、感染予防対策(人数制限や検温など健康状態確認)を徹底することでツアー客から感染者は出ていない。屋外での観光ツアーだけに、対策を万全にすれば乗り切れることが示され、次につながる今シーズンの取り組みとなった」と語った。
ザトウクジラは、ハワイや沖縄・慶良間諸島付近などで出産・子育てをしているとされており、夏はアラスカなど冷たい海域でオキアミなどを採食する。国立科学博物館によると体長13~15㍍、体重30~40㌧。顎と頭部に多数のこぶ状突起があり、フジツボが付着していることもある。