保護され、森に帰ったアマミノクロウサギ(環境省提供写真)
環境省奄美群島国立公園管理事務所は30日、交通事故で負傷したアマミノクロウサギ保護個体が野生復帰したと発表した。奄美大島でアマミノクロウサギの交通事故による傷病個体が野生復帰したのは、2度目だという。同事務所は「野生動物の交通事故防止にぜひ協力を」と呼び掛けている。
アマミノクロウサギは奄美大島、徳之島にのみ生息する原始的な形質を残したウサギで、環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠB類、国内希少野生動植物種に指定されている。奄美大島でのアマミノクロウサギの交通事故数は2016年17件、17年26件、18年21件、19年22件、20年50件、と増加傾向にある。
2021年4月14日午後8時ごろ、宇検村湯湾と部連の間の県道79号線上で交通事故があり、負傷したアマミノクロウサギ(オス、成獣)が保護された。保護された個体に大きな外傷や骨折はなく、奄美いんまや動物病院で伊藤圭子獣医師により治療と経過観察が行われた。頭部打撲によると思われる神経症状が見られたが、投薬などにより一過性で改善した。
19日に奄美野生生物保護センターに移送して経過観察を行い、運動能力についても問題ないと判断し、21日夕方に、保護場所近くの県道からやや離れた森林内に放獣。放獣時はキャリーケースの中で動かずじっとしていたが、体の向きを変えて周囲が見られるようになると、すばやく走って森林内に帰っていったという。
奄美大島ではアマミノクロウサギやケナガネズミなど、野生生物の交通事故が多発。国道などの大きな道路でも事故が発生している。同事務所の阿部慎太郎所長は「奄美大島ではどんな道路でも生きものが出てくる可能性がある。特に夜間は、生きものにも配慮してゆとりを持った運転をお願いしたい。今回のように比較的軽傷で保護されることはまれだが、すぐに治療すれば回復できることもある。けがをしたり死んでしまった希少種を見つけたらすぐに奄美野生生物保護センター電話0997・55・8620へ連絡してほしい」と呼び掛けている。