新型コロナウイルス感染拡大の影響により時短営業要請などで業務用の低迷が続く黒糖焼酎(資料写真)
5月9日と10日は「奄美黒糖焼酎の日」だが、PRイベント開催が見送られるなど昨年に続きコロナ禍で迎える。業界全体の出荷量は今年に入っても前年割れが続くなど低迷、会食自粛や飲食店への時短営業要請などにより業務用打撃が深刻な影響を与えている。巣ごもり(家飲み)需要が期待されるものの消費で業務用とは大きな開きがあり、業界の試練が続く。
奄美黒糖焼酎の日は、5(コ)9(ク)10日(トウ)の語呂合わせ。奄美大島酒造組合(現在は県酒造組合奄美支部)が奄美の伝統文化として継承されてきた焼酎の全国PRと産業振興につなげようと、2009年に制定した。
若者のアルコール離れ、し好品の多様化で本格焼酎の消費は全体として伸び悩んでいたが、追い打ちをかけたのが昨年から続く新型コロナウイルス感染拡大の影響。奄美支部によると、今年に入っての黒糖焼酎出荷量の前年同月比は、1月98・2%(県内107・6%、県外86・2%)、2月87%(県内85・7%、県外90%)、3月98・5%(県内93・9%、県外106・9%)。
全体では前年割れが続くが、637㌔㍑の出荷量となった3月は県外向けが6・9%増と伸びた。
同支部は「厳しい状況下でも3月の県外出荷量は持ち直した。だが、4月に入り東京や大阪などに対し、3回目となる緊急事態宣言が出されたことで、4月以降、再びかなり落ち込むのではないか」と危機感を募らせる。出荷量は前年比で70%台まで下降すると各メーカーの経営は厳しい状況に追い込まれるという。飲食店の時間短縮営業(酒類の提供禁止措置も)や休業要請が相次ぐ一方、家飲み需要に活路を求める取り組みもあるが、「業務用と家庭用の消費割合は、7対3~6対4と大きな差がある。飲食店での需要が持ち直さない限り、出荷量の伸びは難しい」(同支部)。
出荷量の低迷は本格焼酎全体に及ぶ。九州の県別に2月で比較すると、本格焼酎全体をけん引する大手メーカーがある宮崎県でも88・8%と11・2%減となり、鹿児島県全体の95・2%(4・8%減)より減少幅が大きかった。また、麦焼酎の「壱岐ゴールド」が知られる長崎県は65・6%と大きく減少している。
業界からは、ワクチン接種が浸透し日常を取り戻すと期待される来年の春あたりまでは厳しい状況が続くとの見方が出ている。奄美黒糖焼酎の日を迎えるにあたり、県酒造組合奄美支部の乾眞一郎支部長は「コロナ禍による国内需要の低迷により、各メーカーの経営状況は厳しく、行政支援を受けながら制度資金の活用により、海外への展開を視野に入れた事業も実施している」として業界の現状への理解と、奄美黒糖焼酎の愛飲を願っている。