勉強会の開催にあたり、陸自奄美警備隊が災害派遣時などで活用するドローンの飛行展示も行われた(22日、奄美市名瀬の奄美駐屯地)
陸上自衛隊奄美警備隊は22日、2025年度奄美市危機管理防災機関勉強会を同市名瀬の奄美駐屯地で開いた。自然災害発生時の「女性」への支援をテーマに警察や消防、行政、医療機関など9機関63人(うち女性19人)が出席。防衛省が掲げるWPS(女性、平和、安全保障)を基に社会的性別を考慮した「ジェンダー視点」による危機管理の取り組みなどを話し合った。
勉強会は22年から関係機関との相互理解の促進、連携の強化を目的に実施。昨年は県総合防災訓練の振り返りを図り、7機関(自衛隊、奄美署、大島地区消防組合、奄美海上保安部、奄美市、県大島支庁、名瀬測候所)が出席。今年は医療機関(県立大島病院、名瀬徳洲会病院)が加わった9機関で開催した。
会では、市地域防災計画で想定する奄美豪雨災害を前提に、各機関の長や課長クラス、女性職員らごとにグループディスカッションを実施。能登半島地震(24年1月)で表面化した、女性被災者や災害対応に当たる女性職員への保護や支援などの課題を共有した。
各治安機関は主に女性職員の勤務環境を報告。発災直後は男女関係なく任務に当たるとするも「女性用の入浴支援を配慮」(海保)、「職員が母親の場合は動ける女性職員を優先し、全国の応援部隊を待つ」(警察)など説明。奄美駐屯地業務隊の中田有加陸曹長(41)は「育児に励む女性職員の大半が災害対応の出勤がしづらい環境にあることを知った。自衛隊には(駐屯地が子どもを預かる)緊急登庁支援があるが、市による預け先の確保やボランティア支援を要望する意見があった」と述べた。
奄美警備隊長兼奄美駐屯地司令の長谷川健1等陸佐は「どの機関も女性自体が少なく、今後の職員採用に向けた意見など示唆に富む議論ができた」と総括。「本土からすぐに応援、救助部隊が来ることが厳しい離島では、多機関の連携による72時間以内の初動対処が非常に大事。災害に限らない国民保護においても実動、机上の訓練を用いた連携を継続できれば」と参加機関に呼び掛けた。
WPS 紛争や災害発生時に女性らを保護するとともに、安全保障に関わる場への女性の主体的参加で持続的な平和が築けるという考え。00年に国連安保理で決議され、防衛省では23年にWPS推進本部を、25年4月には陸自が同推進室を設置している。