市民の声把握へワークョップ

地場産物の活用、安定した供給・消費に向けてさまざまな意見が寄せられた市民参加型ワークショップ「食と農のアイデア会議」

「相談所開設を」「伝統料理 若い人の認知度低い」
「食と農の総合戦略」策定の奄美市

 「食と農の総合戦略」策定を目指す奄美市は11日、市民の声を把握しようと市民参加型ワークショップ「みんなでつくる しあわせの島 食と農のアイデア会議」を市役所会議室で開いた。高校生を含む約30人の参加があり、五つのグループに分かれて意見を出し合った。地場産物を家庭でも安定して消費していくため、問い合わせに一括して対応する窓口として「食と農の相談所をつくる」という提案もあった。

 アイデア会議は市農林水産課が主催。戦略策定の委託(運営事務局)を受けている一般社団法人奄美みらいエネルギー(渡太郎代表理事)が進行した。

 参加者が意見を出し合う前に、コーディネーターを務める鹿児島大学法文学部法経社会学科経済コースの市川英孝教授が経済学の観点から提言。食と農の関係について「分離できないもの」とし、奄美の現状では食料品のほとんどを島外からの移入に頼っていることから「商品の価格上昇(本土以上に深刻な物価高)」に直面していると指摘。「60~70年前の奄美では自分の庭先でいろんな物を育て食卓に上げ、消費していた。以前できたことが、できないことはない」として循環型食料自給体制の在り方では、▽島の土地・資源を有効に活用▽島の人からだけでなく、島外からの知見も活用▽伝統の食・農文化の再検討▽伝統に融合させる、最新のテクノロジー導入▽島内消費を満たすだけでなく、島外からの需要―を挙げた。

 続いて参加者は、奄美の食と農の課題・問題点、解決策をグループごとに意見交換。伝統料理(島料理)について「油ぞうめんや鶏飯しか知らず、若い人の認知度が低い。祖父母に作り方を聞いても伝えることに難しさがあり、受け継ぐことができない」との意見も。奄美の食材の知名度の低さを上げる意見もあり、「ここに来てタンカン(かんきつ)のおいしさを知り、びっくりした。おカネをかけて知られるための戦略を立て日本中に伝えてほしい」。自給体制を構築するためにも伝統野菜(島野菜)を安定的に供給することが欠かせないが、「農家になりたい!と思える産業に農業が育っていない。安心して生産できる消費の仕組みができていない」という問題点が取り上げられた。

 寄せられた意見をグループごとに発表。共通したのが地場産物を地元で消費する取り組み。「正月やお祝いだけでなく、島料理を家庭で日常的に食べることで地場産物の安定消費につながる。そのためにもどこで購入できるか、どの店で販売しているかといった食と農に関する情報の窓口となる相談所をつくる」との方策が示された。加工センターの整備により伝統野菜を原料にした加工品をつくり、新しい名産物として島外で販売し外貨を稼ぐという取り組みを求める発表もあった。

 運営事務局では今回の意見(アイデア)を「市民の生の声」としてまとめていく。