タンカン持込み再開

廃棄処理のためのタンカン持ち込みが再開された奄美大島選果場

名瀬中央青果の初セリ。柑橘類で例年入荷があるポンカンは、今年はゼロだった

奄美市で廃棄処理 瀬戸内町や龍郷町も開始
中央青果初セリ ポンカン入荷なし

ミカンコミバエ種群の緊急防除に伴うタンカンの買上げ補償単価設定で、奄美大島最大の産地・奄美市では先月21日から廃棄処理のための果実持ち込みを受け付けているが、年末年始休み開けの5日から受け入れが再開された。タンカン廃棄は瀬戸内町や龍郷町でもスタート、早期根絶を願い作業が進められている。

廃棄・買上げは、販売実績資料提出による単価設定→選果場への果実持ち込み→検量→廃棄→支払という流れ。奄美市では生産者から提出される書類受付を名瀬・住用・笠利の3地区ごとに市役所や支所で行っており、単価決定後、名瀬朝戸にある奄美大島選果場へ果実が持ち込まれている。

選果場への果実持ち込みは12月26日から今月4日まで出来なかったが、5日から10日ぶりに再開。今期のタンカンは豊作傾向で玉伸びがよく、例年より早く緑が抜け特有の紅乗りはまだだが黄色く色づいた状態。廃棄となる生産量は奄美大島全体で当初の予想(約800㌧)を上回る約1500㌧が見込まれ、このうち6割を主産地の奄美市が占める見通し。

選果場には再開を待ちかねていたかのように、専用のコンテナ(収穫した果実を入れる容器)を積み込んだトラックが次々と乗り入れた。廃棄命令書を交付する植物防疫官が立ち会い、コンテナの検量後に廃棄へ。生産者とともにJA職員らがコンテナから重機に移し、次々と土中へ重機で埋却処分された。久しぶりの再開でトラックが一時、数珠つなぎになることも。生産者からは「きょうは持ち込み量が多い。ここまで育ててきたタンカンを廃棄するのはもったいない。早期根絶により次作は島外に出荷できるようになってほしい」との声も聞かれた。

奄美市以外では瀬戸内町と龍郷町でも同日からタンカンの廃棄を開始。集荷検量後、瀬戸内町は篠川深山にある町有地の土捨場、龍郷町は戸口の町有地で廃棄処理している。大和村は現在タンカン集荷中で廃棄は後日、宇検村は4日からポンカンの回収(集荷)・廃棄に入り、タンカンは12日から予定している。

5日、名瀬中央青果(株)では初セリが行われた。果実類で入荷したのは柑橘=かんきつ=がアカミカン(瀬戸内町産)などで、例年入荷があるポンカンはゼロだった。柑橘以外はパッションフルーツ、シマバナナ(青)など。移動規制の影響で果実類の入荷量は例年に比べ少量。中央青果担当者は「ポンカンは例年、初セリ時100㌔ほど入荷があったが、今年はまったく出ていない。初セリ以外の入荷はポンカンの場合、日量1㌧から、ミカンコミバエ問題表面化後は50~60㌔まで低下している。島内流通は可能となっているものの早期根絶を優先し、取り扱いを自粛する傾向にある」。

同青果買受人の一人は「正月需要がある12月も青果物の売上は4割ダウン。タンカンが島外出荷できなくなったことで2~3月は売上が半減するのではないか。贈答用の商材としてタンカンに代わるものがないだけに、移動規制の影響を今後より強く実感することになるだろう」と厳しい状況を語った。

初セリで同青果の福山治社長は「ミカンコミバエを早期根絶して、一刻も早く規制を解除しなければならない。奄美の特産であるタンカンが新たな信用と評価が得られるよう努力していこう。今年を新たな飛躍の年にしたい」と呼び掛けた。