市町村体制も前提に

脱色が進み黄色になりつつあるタンカン。生産農家は「青取り」を認めての早期廃棄命令を求めている

タンカン年内廃棄
量はポンカンと大差

奄美大島へのミカンコミバエ侵入に伴う緊急防除では移動規制されているポンカン果実の廃棄作業が14日から始まったが、果樹農家はタンカンの早期廃棄も求めている。タンカンの廃棄命令について農林水産省は「制度上のしばりはない」としているが、年内で廃棄命令が出せるかは検量や書類の事務作業などを行う市町村の体制も前提になりそうだ。

タンカンの早期廃棄について、奄美市住用町の果樹専業農家・元井孝信さん=JAあまみ大島事業本部果樹部会顧問=は11日にあった県議会産業経済委員会に参考人招致された際も必要性を強調。「ポンカンのように収穫期に入ってからの廃棄となると、量が多いタンカンは作業員も雇用してハサミを使った二度切りで果実を収穫しなければならず農家の負担が大きい。現在の段階の『青取り』なら手もぎで、摘果の延長として対応できる。来年の生産に向けて樹を元気にするためにも、年内で果実の処理ができるよう廃棄命令を出してほしい」と求めている。

これに対し同委員会で県当局は、タンカンの廃棄命令(緊急防除に関する省令に基づき植物防疫官が実施)は年内にも出されるとの見通しを示した。同省消費・安全局植物防疫課の島田和彦課長は「移動規制(島外出荷禁止)が13日から始まり、ポンカンについては14日に廃棄命令が出され、廃棄作業が行われているところもある」とした上で、タンカンについて「移動制限基準日(10月8日)が設けられ、13日施行の省令(生果実の移動規制)も制定されており、廃棄命令に関する制度上のしばりはない」と説明。ただし市町村が行う検量や県が主体となっての価格付けを経ての廃棄命令だけに、一連の手続きが必要になる。

廃棄命令後は果実買い上げ契約書、廃棄、買い上げ(補償)額決定通知、請求書、補償額の支払いという事務手続きが進められる。補償額の支払時期はポンカン1月、タンカン3月の予定。可能な限りの廃棄を求めているが、通常、島内で消費されているものは引き続き島内で消費でき、加工原料用も生産者と加工業者との話し合いを基本に加工原料用果実が確保できる。島田課長は「気温が低下する冬場はタンカンがミカンコミバエの感染源になることはほとんどないだけに、冷静に対応してほしい」と呼び掛けている。

県大島支庁の現地対策本部はタンカンの年内の廃棄について「近く国の説明があり、それにより廃棄命令の時期が判断されるだろう。年内廃棄を求める農家の意向には応えていきたいが、処理量の問題(生産量はポンカン約100㌧に対し、タンカンは1千㌧超)もある。検量や書類手続き等を担当する市町村の事務作業がスムーズに進むようにしなければならない。現在、市町村はポンカンの最中であり、これが終了してからの対応になるのではないか」としている。

JAあまみ大島事業本部果樹部会の岡山俊一会長は「手もぎができる青取り段階と収穫期の労力とでは3倍くらいの差がある。タンカンは青取りを認める形で年内の廃棄命令を出してほしいが、事務手続きを含めて市町村の処理作業が混乱することがないよう体制を整えてもらいたい」と要望している。