英名は「オリエンタルフルーツ・フライ」

ミカンコミバエの成虫(農林水産省植物防疫所ホームページより)

ミカンコミバエ
柑橘農家「和名は風評被害に直結」

奄美大島へのミカンコミバエ侵入で移動制限植物の島外移動規制が13日から始まるが、和名のミカンコミバエに対し、米国では英名で「オリエンタルフルーツ・フライ(東洋の果実に寄生するハエ)」と呼ばれている。いずれも属名だが、和名は柑橘=かんきつ=類のみを連想させることから、奄美の果樹農家からは「柑橘の風評被害に直結する。和名を考慮すべきではないか」との声がある。

ミカンコミバエは本種のほかに近縁種も存在することから、ミカンコミバエ種群(集合体)が正式な和名。国際的な呼び名である種名(属名プラス種小名)は「Bactrocera dorsalis」(バクトロケラ・ドリサリス)。

国立環境研究所の侵入生物データベースによると、自然分布は東南アジアだが、中国、東南アジアなどで発生し、強風に乗って国内に入るとされる。国内での初確認は1919(大正8)年に沖縄本島で。この時点ですでに沖縄県全域に侵入していたと考えられるという。奄美諸島では29(昭和4)年に喜界島で、小笠原諸島では25年頃に確認された。

専門家によると、日本への侵入が確認された際、属名である和名の必要性から分類学者がミカンコミバエと名付けたとみられるという。この和名に対し、タンカンなどを栽培する果樹農家は「果皮が柔らかいグアバやマンゴーの方が被害にあいやすいと聞いている。今回の移動規制でも対象品目は果物類、果菜類で多品目にわたるだけに、ミカンだけが付いている和名には違和感がある。英名の方がトロピカルフルーツ全体を捉えている。最近まで柑橘以外の品目を栽培している農家の中には、移動規制は関係ないという受け止めがあった」と話す。

ミカンコミバエの和名は柑橘類の風評被害を招くとの見方もあり、今後の課題になりそうだ。

同様のハエ目ミバエ科の病害虫である和名ウリミバエの英名は「メロン・フライ」。ウリ類だけへの寄生を表しており、昆虫生態学・応用昆虫学の専門家である京都大学名誉教授の藤崎憲治氏は「やっかいなのは今回問題になっているミカンコミバエ。早期に根絶を図り移動規制を解除していくためにも、冬場の徹底した防除対策が鍵になる。それにより温度が上昇する春以降の活動が左右されるだけに、勝負の来年に向けて関係機関は一丸となって手を緩めずに対策に取り組んでほしい」と指摘する。

根絶に向けては果実の廃棄がとられ、収穫期のポンカンも週明けから始まる。藤崎氏は「生息密度を減らしていくためにもホットスポットをいかにたたくかが重要。樹園者不在の放置園などは、ミカンコミバエが侵入し寄生するホットスポットになる可能性があるだけに、こうした園の対策も進める必要がある」としている。