西郷からの返礼品 龍郷町教委に寄贈

西郷の返礼品を寄贈した久保さん(左)

白磁染付専用窯で焼成の鉢
りゅうがく館で一般公開

龍郷町教育委員会(碇山和宏教育長)は2日、赤尾木白浦に残されていた西郷隆盛が島民の勇清に贈った返礼品の鉢1個の寄贈を受けたと発表した。同集落の久保哲郎さん(80)が、同町の生涯学習センター「りゅうがく館」を訪れて同品を碇山教育長に贈呈。町教委は同日から、りゅうがく館2階の文化財展示室「奄美・龍郷 島ミュージアム」で、寄贈品を展示し一般公開している。

返礼品の所有者は、勇清から5代目となる現在は北海道函館市在住の濱崎卓夫さん(77)。濱崎さんの兄が、久保さんになることから鉢を預かり管理していた。鉢の大きさは、幅が19㌢で高さ7・5㌢。

『愛加那記』を著した木原三郎さんの調査で、鉢は幕末1840年代の伊集院苗代川の白磁染付専用の南京皿山窯で、焼成されたものと推定。『龍郷町誌・歴史編』によると、「八角鉢、呉須で文様が描かれている」という。

勇清は町誌に、西郷の知り合いで白浦の貧しい漁師として記述。西郷が勇清の家の前を通りかかったときに、釣り上げた魚を料理し大型二枚貝の貝殻に盛り付けて酒宴でもてなしたという。町誌は「鹿児島から持参したどんぶりとカラカラ各一個に美酒を添えて人に頼んで持たし、先日の恩を謝した」と返礼品の経緯を記している。

碇山教育長は、返礼品の寄贈に感謝。「町民や多くの人に見てもらいたい」と話し、町文化財保護審議員会でも西郷に関する資料などの情報提供を求めたという。

久保さんは、「りゅうがく館」の完成と町から打診を受けて寄贈を決意。鉢の一般公開で、「多くの子どもたちにも見てほしい」と語った。

同館は、先月に特別展示していた愛加那のかんざし(ギハ)のレプリカを作製。同日から鉢と合わせて展示公開し、来年の大河ドラマ「西郷=せご=どん」に向けて西郷関連の展示を充実させていくという。