住用出身のエコツアーガイド 和田さん

住用出身の奄美大島エコツアーガイドの和田さん

住用東仲間のモダマ

「出入り口に入門ゲートは」「入山料1人ワンコイン」

 奄美市住用町の市道・三太郎線のナイトツアーに12日、奄美大島エコツアーガイドの和田霜析さん(46)と同行した。西仲間で合流、軽トラックに同乗。午後8時に出発した。

 昨日の雨で「今日はカエルが見られるかもね」と和田さんの母親の美智子さんが予想をたてる。住用の川や山を熟知した人の言葉だ。「昨日はじょんこ降り(上流の大和村で降った雨)したから川は増水、大和村の山からの雨も住用の川に流れてくるから、住用は水の郷。洪水にも遭うけどね」と説明した。

 時速10㌔程度の速度でゆっくり進む。前方に車発見。「車がいなくなってから30分ほどしないと、動物は出てこないから、しばらく待とう」。すると、ほどなくして、右手や左手に「オットンガエル」と「リュウキュウカジカガエル」が登場。カジカガエルは、数匹跳ねた。美しい鳴き声は聞こえなかった。ホウホウとコノハズクの鳴き声を和田さんが聞き取った。

 10分ほどすると、ガイド中の車とすれ違う。
相手も時速10㌔程度。ゆっくり進んでいる。
進んでいたガイド中の車は右側の山側で動くものを発見したらしい。盛んに懐中電灯が揺れている。

 一般車両がこちらの車を追い抜いていく。30㌔以上のスピードを出している。「ナイトツアーで動物を守りながら観察するための10㌔制限を知らないのかなあ」と、和田さんはつぶやく。認知度の低さを憂う。続いてハブの死骸と出会う。見過ごす。

 先に入山していた一般車両が石原栄間線に進む。別れて、さらに進むとガイド中の車とすれ違う。スタル俣線には入らず、東仲間のルートへ移動。「今日は、ホタル(キイロスジボタル)も見えるかもしれない」と、さらに10㌔程度で進む。前方に、ケナガネズミが何やら食事しているのを発見。こちらに気付いて、跳びながら山に逃げて行った。

 さらに前方からガイド中の車。お互いゆっくり、進む。ケナガネズミに出会えただけで幸せだ。サーチライトを右手に左手で運転する和田さん。「右側見て」と案内。アマミノクロウサギがおしりを向けてたたずんでいる。「早く逃げて」と和田さんが声をかけると、おもむろに「どっこいしょ」という感じでヤブに消えた。これも出会えてラッキー。

 さらに進む。ライトを消してウインカーのみにすると、両側にホタルの光。この日は危ないので車は下りずに、ホタル鑑賞。東仲間に近くなると、突然ノヤギの群れに出くわした。5匹。子ヤギと長老のようなノヤギがゆっくりとガードレールの向こう側の闇に消えた。

 最後に茶色に色が変わったモダマを見てナイトツアーを終えた。ガイドの和田さんは、次のように語った。①三太郎峠の出入り口に入門ゲートのようなものが必要で、富士山のように入山料のようなものをガイドも含めて1人500円取っては。収益は、入門ゲート管理人費用と住用町への収入で、ロードキルの対応や子どもたちの観察などに充てる。②ナイトツアーで入山するのにネットでの時間予約システムを採用。一日東仲間と西仲間双方向から8時過ぎから12時までの入山時間。30分ごとに時間を切る。車は10人乗りまで。③30㌔以上のスピードを出す車には罰金などの規制も考えては、─など、いろんな対応策を考えていた。

 和田さんの地元である西仲間。3年前に神奈川県から帰省して今年、同エコツアーガイドを取得。幼いころから狩猟をしていた父と山に出かけ、冷川=ひやがわ=のリュウキュウアユや、雨が降ると「突然現れる滝」など、山も川も海も熟知している。三太郎茶屋下の実家山林は、国立公園時に特別保護区になり、守らないといけない山になった。守られることでありがたさも感じている。「うちの山が特別保護区でいっぱい。動物たちが守られる」。和田さんはこの山を守るためにUターンしたのだろう。「生態系を守り続けるためには大事なこと」。

 三太郎線のナイトツアーの検討課題は多かったが、和田さんから具体的な対応策が聞かれた。8月には施行ルールが決定する。2か月の周知期間を経て10月にはルールの運用開始予定。今月末には、施行ルール案の意見照会が行われる予定。