9月収束兆し、10月急増

ミカンコミバエ防除対策として設置されている誘殺用トラップとテックス板

ミカンコミバエ
山間部にも寄主植物存在

果樹の害虫ミカンコミバエの奄美大島(加計呂麻・請・与路島を含む)への再侵入は、9月いっぱいまでに収束の兆しを見せていたが、10月に入り急激に増加したことがわかった。タンカンでは経済園を中心に果実の「全量廃棄」に向けた機運が高まる一方で、山間部には柑橘類以外の寄主植物も存在することから、テックス板散布による防除の徹底が早期根絶の鍵を握りそうだ。

農林水産省や県大島支庁の対策本部によると、ミカンコミバエは6月時点で数匹を奄美市周辺で確認。南西諸島には例年、風に流されての「飛び込み」で台湾やフィリピンからミバエが飛来しており、「初期防除(トラップによる誘殺やテックス板投入)により毎年、飛来確認から3カ月で収束している」。

今回も9月いっぱいで収束の兆しがあったものの、10月に急増。奄美大島での誘殺数は9月以降、南部を中心に1週間で数匹~数十匹単位に上り、10月に入ってからは100匹を超える週も。9~10月の2カ月間で531匹の誘殺が確認され、植物防疫法に基づく緊急防除による今回の移動規制(来月13日から2017年3月31日まで)に至った。

10月の急増について関係機関は「ミカンコミバエが寄主植物に産卵しやすい時期に入ったからではないか」と推察する。瀬戸内町では果実が熟するなど収穫期に入った野生のグアバに幼虫の寄生が確認されたが、グアバ以外でも山間部に自生するヤマビワやガジュマルの実への寄生も確認されている。

「最初にミカンコミバエが確認された奄美市などでは防除に成功しているが、加計呂麻など周辺離島では山間部にある寄主植物の発生状況などが十分に確認できず、結果的に防除作業の遅れにつながった。作業に取り組む人員の配置、トラップやテックス板の投入量も奄美大島側に比べて若干足りなかったのではないか。山中という作業者が簡単には入り込めない場所的な問題があった」との分析もある。こうした山間部にも寄主植物が存在するため、「タンカンなど柑橘類を中心に経済園だけでなく庭木を含めて果実の全量廃棄の動きがあり、早期根絶に向けて生産者を始めとした協力は大変ありがたい。一方で山間部の寄主植物の防除対策にも全力をあげなければ、全量廃棄しても効果は限定的ではないか」という見方も。

山間部や崖部を対象にした対策として、県は16日から有人ヘリコプターによるテックス板の空中散布を開始した。大島支庁によると、誘引物質として植物の丁子=ちょうじ=(フトモモ科の常緑高木)由来のメチルオイゲノールが用いられている。ミカンコミバエのオスを引き寄せる効果が高いとされ、適正な量と時期がポイントになるが、誘引剤による侵入定着リスク軽減技術として沖縄県では事例があるシステムという。

生産者の中には国や県に対し随時の説明会開催など適切な情報提供を求めると同時に、防除対策にも協力したいという声が出ている。これについて市町村からは「防除については防除のプロに任せないと混乱する可能性もある。初期情報が提供されず、果樹農家は国や県への不信感が根強いが、冷静に対応することで産地一丸となった取り組みが前進するのではないか。果実の廃棄作業で農家は協力し、高齢農家などの作業を手伝うなどした方が、対策がスムーズにいく」との指摘が出ている。