空き家セミナー

空き家の利活用や発生未然防止対策などについて学んだセミナー

処分への意識改革を
奄美市割合高水準 手入れによる利活用推奨も

空き家の管理意識向上の普及啓発を図る「空き家セミナー」(鹿県主催)が19日、奄美市名瀬のAiAIひろばであった。法律知識や登記手続き、賃貸や売買の活用などの観点から5人の専門家が発表。受講者らは現在の空き家の利活用に理解を深めるとともに、少子高齢化に伴い増加が見込まれる利用されない住居に対し、処分などの意識改革による空き家の未然発生防止対策について理解を深めた。

住宅・土地統計調査によると、別荘など二次的住宅や賃貸、売却用の住宅を除いた利用目的のない空き家率(2013年)は、全国平均5・25%に対し、単身高齢者世帯の割合が高い鹿県は住宅数9万5500戸の11・04%で全国1位。奄美市も同2020戸の8・41%で県内14位と高い水準にある。一方、県内では分譲マンションなどの建築により年間約1万1千戸が新築され、今後の人口減少により空き家増加が懸念されることから、県は今年度セミナーを開催。今回は同市の協力も得て、奄美会場で実施した。

県建築士会奄美大島支部の重信千代乃さんは、大島地区消防組合が調査した奄美市の空き家729件(15年度現在)のうち、118件がほぼ廃屋となっている現状を報告。住宅密集地や急傾斜地の廃屋に近い空き家について、「防災や景観の観点から、早急な対応が必要」と強調。また、利用可能な空き家も存在することから、「手入れしながら最後まで住み続けられる住居にすることが重要」と訴えた。

NPO法人「結の夢来人=むらびと=・絆プロジェクト」の有馬法久さんは、同NPOで実践する空き家の管理・保存・活用による定住・移住促進支援を紹介。空き家調査と並行して所有者確認などを行い、利用を希望する人との橋渡し役としての活動を挙げ、「空き家を地域の“負の遺産”ではなく、“宝”として活用できれば」と話した。

財産でもある不動産は、所有者の許可なく行政や地域などの関わりが難しいことから、近隣トラブルの火種となるほか、まちづくりの障壁になることも。鹿県弁護士会の藤尾直人さんは、「活用できない空き家の処分は深刻な問題」と指摘。不動産の登記が故人になっている場合も多いことから、相続人の意識改革による処分への意識を向上するとともに、「個人で解決できないものについては、社会全体で解決していかなければいけない」と述べた。

同会場には専門家団体による空き家対策に関するパネル展示のほか、セミナー終了後には個別の無料相談会もあった。