景勝地で伐採、風害懸念

シマオオタニワタリ群生地で一部伐採された樹木(17日、宇検村湯湾)

宇検村湯湾川渓流
シマオオタニワタリ群生地

 宇検村の湯湾川渓流で見られる「シマオオタニワタリ」群生地で、何者かにより一部で伐採が行われていたことが分かった。現地は開通した奄美トレイル(宇検村エリア)の見どころポイントの一つで昨年に続いての伐採に、自然に詳しい専門家は景観保護に配慮を求めている。

 シマオオタニワタリは、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されている着生植物。現地では約700㍍の範囲に1千株以上が群生していて、国内有数の群生地と評価されている。

 また世界自然遺産奄美トレイル(宇検村エリア)では、「うけん市場・湯湾集落・湯湾岳コース」(全長5・9㌔、高低差約450㍍)の見どころポイントの一つに選定。トレイル開通後には村が観光案内板を滝の見える場所に設置している。

 現地は村道沿いの観光案内板から、上り方向十数㍍先の渓流側に生える樹木の根元を残し一部伐採して切った枝を放置。道路沿いから複数のシマオオタニワタリが着生しているアマミアラカシが見えることから、関係者は写真撮影などの目的で伐採したのでないかと推測している。

 自然写真家でNPO法人奄美自然環境研究会の常田守会長は昨年に続く伐採を受け、「奄美では、ここしかない島の宝とも言える場所。世界自然遺産登録を目指しているというのに、まだこういう事態が起きている。わずかなことから台風などで失われかねない。保護の意識に欠けていないか」と訴える。

 村産業振興課によると、今月13日に一般からの情報で現地の状況を確認。同課担当者は、「現地は奄美群島国立公園の保護区域内に入っていなくて、伐採された樹は条例指定の種でもない。再発防止に向け対策などを有識者の意見を参考に協議していきたい」と説明した。

 今後は村のガイド協会などと調査して、現地を歩いてより間近に観察できる歩道を設け保護と活用を図る予定。常田さんも賛同していて「将来的には、伐採しないでも渓流の右岸側を歩いて観察したり、写真撮影できるような観光戦略をとってもらいたい」と話した。