新型コロナウイルスの緊急対策として、総務省が発表した現金10万円を一律に給付する「特別定額給付金(仮称)」。27日時点で住民基本台帳に記載されているすべての人が対象。補正予算は今月30日にも成立する見通しだ。奄美の多くの自治体では5月中旬には申請書を発送したい考えで、給付開始は早くても同月下旬と見られている。申請書返送の周知、高齢者向けの窓口設置――。迅速に給付できるよう各自治体は対応を急ぐ。
一律給付に向け、国は補正予算案に12・9兆円を計上。同省が示した概要によると、各世帯に届いた申請書に給付対象者と振込先の口座番号を記入後に返送。その際確認用の免許証、通帳の写しなどの添付を求めている。県内の自治体には20日付で通達済み。
同省特別定額給付金室は奄美新聞の取材に対し、「住民の手に、迅速に現金を届ける」と説明。実施主体の市町村に対し、予算の早期編成など準備を指示している。
当初は新型コロナの影響による減収世帯への支給を進めていたが一転、政府はこの方針を取り下げ、給付対象を国民一律に転換した経緯がある。同室担当者は「世帯対象よりも事務作業はスムーズになる」とした上で「可能な限り準備に着手し、受付窓口の分散など『非接触型』の対応も同時に図ってもらいたい」と注文した。
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今後どのように対応するかは自治体の人口規模や庁内体制によっても様々。予算措置については議会臨時会での承認か、専決処分。主管部署は総務課が中心か、または住基システムを担う課との連携―などと異なる。
申請書の様式も決めなければならない。事務処理量を想定して各部署から職員を集めたチーム制を検討する自治体もあった。
取材に対し自治体からは、申請書発送は連休明けから5月中旬を目指すとの回答を受けたが、給付開始は下旬以降、もしくは「未定」とする見方を寄せられた。
群島に先駆けホームページ上で「5月中の手続き開始」方針を示したのは与論町。対策室を22日に立ち上げ、全世帯に配布する町広報誌でも周知する。「給付準備を進めていることを住民に知らせたかった」(町担当者)。
そのほか、知名町は発送する申請書に地域ごとの受付スケジュールの同封を検討。天城町はホームページや地元ケーブルテレビを活用して周知を図る考え。宇検村は各集落公民館に職員を配置するという。
早期の緊急支援を柱に国は5月中の給付を求める一方、奄美市は「関連システムの更新もあり、本格的な準備はこれから。迅速性が求められているが実施規模も大きく、慎重に対応を進めたい」との姿勢だ。
また多くの自治体が課題に挙げたのは高齢者対応。免許証や通帳の写しを取るためのコピー機や手続き説明のため、庁舎外に窓口設置を検討する自治体も少なくない。その場合、密集状態をつくらないよう時間指定するなどの配慮も求められるため、「準備が整うまで時間を要する」とした回答には、そんな事情があるようだ。
申請は自治体から送られた申請書の返送、またはマイナンバーカードを使ったオンラインによる受付が原則。同省はこのタイミングでの詐欺の横行にも警鐘を鳴らしている。