在宅高齢者に布マスク配布へ

大型連休期間中も布マスクづくりを続ける奄美ファッション研究所の従業員ら


奄美市の在宅高齢者に配布する布マスクを手にする原さん

財源210万円は市職員の寄付
奄美市、地元企業に製造依頼
5人の新規雇用も実現

 奄美市は75歳以上の在宅高齢者約6600人を対象に、布マスクを配布する。市役所職員有志による活動で、財源には係長以上の職員(434人)の寄付金約210万円を充て、衣料品などを製造している奄美ファッション研究所(奄美市名瀬朝戸)に製作を依頼した。5月下旬ごろからの配布を予定している。

 依頼を受け同社は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で失業した市民らを臨時アルバイトとして雇用、大型連休期間中も休み返上で製造に当たっている。

 同社は泥染めや草木染めの技術を生かしたヨガウエアなどの衣料品や小物の製造販売を行っているが、都市部の百貨店休業や全国的な外出自粛の影響でヨガ教室などでの需要も減少、3月以降の売り上げが大幅に減っている。

 一方で、全国的なマスク需要の高まりを受け、4月3日から夏の肌着用のガーゼ生地やヨガウエア用のゴムひもの販売を開始。その後、市内の企業などからマスク製造の依頼が入り、4月中旬からマスク製造を行っている。

 こうした同社の取り組みを知った市側が、職員の寄付金の有効活用策として、高齢者用のマスク製造を依頼。大量の受注に対応するため、同社は27日から縫製やアイロンがけ、ゴムひも付けなどを行うアルバイト5人を約1か月間雇用することにした。

 雇用された5人は元々、市内の飲食店や観光関連会社などの従業員で、いずれも新型コロナウイルス感染症の影響で休業を余儀なくされた。飲食店で働いていた女性(29)は、「収入がなくなり不安だったが、仕事が見つかりホッとした。マスクを作ることで、市民の手助けもできる。やりがいも感じている」と話した。

 マスク不足や地元企業支援、雇用対策といった地域支援効果も期待され、同社主任研究員の原暁穂さん(47)は「地元企業として、地域の要望に応えたいという思いで、マスク製造を始めた。奄美市や龍郷町などから受注があり、雇用にもつなげることができた。1枚でも多く、地域住民にマスクが届けられるようにしたい」と話している。

 市は5月下旬から、対象者に郵送などの方法での配布を検討。ガーゼ生地を4枚重ねで作った布マスクとともに、「地域のため、子どもや孫のために、一生懸命頑張っていただき、本当にありがとうございます」などのメッセージを添えて、配布することにしている。