7人が立候補 乱立、混迷、分散

立候補者が過去最多となった知事選の届け出(県庁6階大会議室)

対決構図、一層不透明化
知事選

 任期満了に伴う県知事選が25日、告示(7月12日投開票)された。過去最多の7人が立候補するという乱立模様。再選を目指す現職に対し、様々な支援を受ける形で新人、元職が名乗りを挙げた。前回選と異なり与党支持のねじれ、野党勢力も共闘には至らず支持層の分散が懸念される中、17日間の選挙戦がスタートした。

 元高校教諭の武田信弘氏(66)、医師の横山富美子氏(73)、元KTSアナウンサーの青木隆子氏(57)、2選を目指す三反園訓氏(62)=自公推薦=、前知事の伊藤祐一郎氏(72)、前九州経済産業局長の塩田康一氏(54)、元鹿児島大学特任助教の有川博幸氏(61)が出馬(届け出順)。1947年第1回知事選での立候補5人を更新する最多数となった。

 多くの陣営は同日、鹿児島市内で出陣式を開いた。推薦する政党の幹部や地元選出の国会議員や県議、支援する団体、業界から応援に駆け付け。会場周辺にのぼりを立て、集まった支持者とともに鉢巻きを締めて、各立候補者は気勢を上げていた。

 陣営関係者によると奄美群島での遊説は奄美大島、徳之島が中心。選挙中盤の6月末から7月初めに入るとみられる。最終日は大票田の鹿児島市内を重点に、最後のお願いをするという。

□     □

 各候補は新型コロナウイルス感染拡大による影響を踏まえ、今後の感染対策、疲弊した地域経済の立て直しを急務とするマニフェスト(公約)を掲げている。社会福祉や産業振興を盛り込んだ政策推進に大きな違いは見られない、となれば三反園県政の評価が論戦の軸になるだろう。

 前回選で三反園氏は脱原発を掲げ、反原発団体との政策協定や野党共闘による後押しで、自公推薦の現職を破って初当選した。今回は一転、自公推薦を受け2選を目指す『ねじれ』構図に。そういった背景から自民県連内部では現職以外の立候補者を推す県議や支持者で意見が分かれ、一枚岩になれないまま保守票分裂の様相を呈している。

 一方、現職の続投阻止に向け、共産を除く連合鹿児島などの野党でつくる「5者会議」は伊藤、塩田両氏に出馬の一本化を要請。告示前日まで話し合いが持たれたが結局は物別れに。連合側は自主投票も示唆している。

 告示まで一カ月を切り、6月に入ると立候補表明が相次いだ。反原発を掲げる横山氏を市民団体が支持し、野党共闘を断念した共産党も推薦に回った。そのほか地熱開発を推進する武田氏、女性活躍や福祉政策を掲げる青木氏。また昨年12月に出馬表明した有川氏は、大学での業務経験で訴え、異例の乱立模様で選挙戦に突入した。

□    □

 前回選で大きな争点となっていた川内原発運営の考え方について各候補で主張は異なるが、産業振興や政策方針に大きな違いは見られない。候補者の乱立は一般的には現職有利とされるが、一定の保守票が割れ気味となっているだけでなく、脱原発票や若年・女性層を取り込みたい新人陣営の動きも活発化。さらには三反園氏が県内の複数の首長に自ら電話し、集票依頼していたと告示日前に報じられ現職の優位性が揺らぐ可能性も、情勢の混とん化に拍車を掛けている。このような構図は県民の目にはどのように映っているのだろうか。

 (川内 博文)