群島の視座 県知事選2020②

夏に向け、来島客の予約が入り出したというダイビング店「マード」の遠藤さん

観光産業
対策と営業の両立「リスクゼロは難しい」

新型コロナウイルスに対する感染拡大防止と営業活動の両立――。観光や宿泊、飲食業などの仕事が接客業である以上、対応する側はこの難しい問題に頭を悩ませている。今春からのコロナ禍で厳しい経営が続いていた奄美の事業所関係者は、緊急事態宣言の解除で徐々にだが経済活動が戻りつつあることに安堵していた矢先、奄美群島外では感染拡大が加速。観光シーズンを迎え、再び受け入れ態勢のあり方が問われそうだ。

奄美市笠利町のダイビング店「オーシャンズ」代表を務める遠藤優人さん(38)。2年前に店を立ち上げ、ウミガメシュノーケリングやスキンダイビングのサービス業に携わる。マーメイド(人魚)の衣装によるフォトツアーも人気を集めている。

兵庫県出身で、奄美の海に魅せられ6年前にIターン。当初は名瀬漁協組合員として魚を獲るかたわら、ダイビングに携わる「半漁半労」スタイルだったが、いまではマリンレジャーが仕事のメインとなった。

今回のコロナ禍で順調だった仕事は政府による県境をまたぐ移動自粛で春休み、大型連休は休業状態に。だが6月19日の全面解除以降、徐々に馴染み客から予約が入り出した。

「航空各社の就航再開で来島客が増加している。店にとってもこれまでに比べ、だいぶ忙しくなってきた」とはいえ、前年と比べると予約状況は7割程度。例年多く見られた家族連れよりも、カップルや友人2人連れなど最少人数にとどまっている。また「奄美の様子はどうか」との問い合わせも珍しくない。来島することに対する地元の反応を確認しておきたいという観光客の意向もこれまでにない特徴だ。

落ち込んだ経営については、持続化給付金と県継続支援金を申請済み。行政支援による業務維持に胸をなでおろしているが、「島内で感染拡大が生じないよう、行政側には引き続き、空港・港での検温など水際対策の徹底を願いたい」と遠藤さん。

感染対策と観光受け入れの両立の難しさを指摘しながらも「奄美人気の高まりから入込は多く、感染リスクをゼロにすることは困難だが、両立させる努力は大事。感染対策が十分機能している地域であることは島外の観光客だけでなく地元にも安心感を与えるのでは」。

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大きな打撃を受けた経済活動の回復と、地域の再活性化を図る国の観光支援事業「GoToキャンペーン」が8月から始まる。移動規制の全面解除後、国内の旅行需要喚起につなげる狙い。総予算は1・7兆円で、旅行の最大半額補助などが目玉となっている。

(一社)奄美群島観光物産協会の松元英雄統括リーダーは「奄美は安全」というイメージを来訪機運の後通しに、同キャンペーンの活用による観光回復に期待感を示している。

東京や関西を結ぶ航空直行便が再開した奄美大島、沖縄からの入込がある与論島を中心に群島全体の波及を見据えながら、「観光は嗜好的なもので、効果波及の裾野が広がることこそ景気浮揚の鍵。コロナ禍以前への状態回復に短縮化が図られる絶好の機会となる」と語った。

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一方で、現在、島外の感染者確認数の急増が懸念されている。特に東京では移動規制緩和後、都内での感染者数100人超えが連日続く。また鹿児島市内では2日、初のクラスター(集団感染)が発生しており、感染拡大の第2波の予兆を指摘する声も出てきた。

奄美大島観光協会(会員約60業者)の越間得晴会長は、観光機運が高まりつつあると思われた中、島外での感染者急増に強い警戒心をあらわにする。協会員に対し自身や従業員、事業所内、地域で自衛意識を高めることを呼び掛けた上で、「気を引き締め、奄美から(感染者を)出さないよう、行政や関係機関が一体となって感染感防止につとめたい」と話していた。