新型コロナ備え巡視船で合同訓練

運ばれた患者を接岸した巡視船に運び込む防護服を着た海上保安官と救急隊員

患者の海上搬送で連携確認
海保や消防など7機関

 新型コロナウイルスに感染した疑いがある人を離島から本土などへ海上搬送する事態に備えて大島地区消防組合消防本部と奄美海上保安部は15日、巡視船を使った患者の合同搬送訓練を奄美市の名瀬港観光バースで行った。医師らも参加し、防護服を着た海上保安官らが救急車から引き継いだ患者を接岸した巡視船に運び込むなど、連携の手順を確認。より安全に運ぶための新たな手段も検証した。

 島内で感染症が発生した場合、保健所を通して県が各機関に搬送を要請。離島間や県本土への搬送は通常、自衛隊ヘリコプターなどの航空機が使われ、悪天候時や夜間などのヘリが飛べない場合に巡視船が検討される。

 同様の訓練は今回2回目で、この日は両部に県立大島病院や名瀬保健所など7機関・52人が参加。同保安部所属の巡視船「あまぎ」(総トン数1300㌧)で、中等症患者と重症患者の2ケースの搬送を想定した。

 救急車が到着すると、感染を防ぐためのアイソレーターバッグに包まれた患者をストレッチャーに移し、防護服を着た海上保安官と消防隊員の6人で急坂のタラップをのぼり慎重に運んだ。船内では医師らがスタンバイし、患者の症状をチェック。あらかじめ決められた収容場所に患者を固定し、搬出手順も確認した。

 重症患者のケース2では、独自のアイデアとしてはしご車を使った搬入搬出も試みた。重症患者は酸素ボンベなど多くの医療機器を装着しており、船内の狭いタラップを担いで通るのは困難。人が乗るバケット部に患者を固定して巡視船甲板に移動させるなど、その有効性を検証した。

 同海保警備救難課・上村邦博課長は「各機関、日頃の成果を発揮しいい訓練ができた」と総括。今後は「互いの課題や改善点などについて意見を交換しながら、誰でも搬送ができるよう(地域独自の)マニュアル作りの検討なども進めていきたい」と話した。