クロウサギの繁殖初めて国際論文に

会見に臨む浜田さん(右)、水田さん(左)

アマミノクロウサギの親子(浜田太さん撮影)

浜田太さん、水田拓さん共著 奄美の自然の貴重さ世界に示す

 写真家の浜田太さん・山階鳥類研究所保全研究室室長の水田拓さんの共著による、アマミノクロウサギの繁殖特性を明らかにした論文がこのほど、ポーランドの学術誌『Mammal Research(哺乳類研究)』電子版に掲載された。アマミノクロウサギの繁殖を詳細に記述した英語の論文が発表されたのは今回が初めてという。

 浜田さんは1986年からアマミノクロウサギの観察を開始。▽繁殖は秋から冬にかけてである(一部は初夏)こと▽親子の巣穴が別々であること▽一回の繁殖で生まれる仔はほぼ1羽であること▽親は2日に1回授乳に訪れることーなど、現在知られているアマミノクロウサギの繁殖に関する知識の多くが、浜田さんの観察によって明らかになったものだ。

 今回、これらの観察データを科学的に認められたものとするため、国際論文の執筆に踏み切った。

 共著の水田さんは2006~19年まで環境省奄美野生生物保護センターに勤務し、19年から公益財団法人山階鳥類研究所保全研究室室長。オオトラツグミ研究の第一人者として活動している。

 両氏の論文『Unique reproductive traits of the Amami rabbit Pentalagus furnessi: an endangered endemic species from southwestern Japan(南西諸島における絶滅危惧種・固有種であるアマミノクロウサギのユニークな繁殖特性について)』は前述したようなアマミノクロウサギの繁殖特性を述べ、同種がウサギ目の中で最も繁殖力の低い種の一つであることを明らかにしている。

 アマミノクロウサギがこのようにユニークな繁殖特性を持つのは、気候が安定して捕食性の哺乳類がいない亜熱帯島嶼で進化した結果だとしている。

 『Mammal Research』は世界的によく知られている学術誌。同論文は13日から同誌の電子版に掲載されている。

 22日に開かれた記者会見で、浜田氏は「クロウサギたちが一生懸命生きるさまを見るにつけ、彼らが安心して暮らせる環境を守り、未来につなげなければと思うようになりました。そのためにも、これまで集めたデータをもとに論文として学会に発表し、奄美の自然の貴重さを世界に知らしめ、後世に残すことはできないかと考えました」と述べた。

 オンライン会議ツール「Zoom」を通して会見に参加した水田さんは、アマミノクロウサギのように「少ない仔を大切に育てる」生存戦略はK戦略と呼ばれていると説明。「人間がマングースやノネコを持ち込んだことにより、そのK戦略があだになっている。人間が持ち込んだ問題は人間が責任を持って解決すべき」と話した。

 浜田さんは現在も定点カメラによるアマミノクロウサギの観察を継続。今後新たな発見があれば報告したいとしている。

 水田さんはアマミノクロウサギの自動車に対する反応を研究中。エコツーリズムが盛んになる中、ウサギたちの生活をかく乱しない利用方法を模索している。