屋外で暮らすネコ対象に問題調査・管理活動レポート

奄美哺乳類研究会の阿部優子会長(左)と同会会員の塩野﨑和美さん

適正飼育・管理推進へ
奄美哺乳類研究会・ACN 「ノネコとノラネコあいまい」

 奄美哺乳類研究会(阿部優子会長)と奄美ネコ問題ネットワーク(ACN・久野優子代表)はこのほど、WWF(世界自然保護基金)ジャパンの協力を得たノラネコの調査、管理活動をレポートにまとめた。奄美で希少種の影響が懸念され対策が進められている飼いネコに関する適正な飼育、管理を推奨するため。ACNでは今後、同レポートをもとに自治体や小中学校と連携し、集落行事や環境教育の授業で活動を行うという。

 同レポートは、▽3機の自動撮影カメラを使った生き物調査(2016年10月から龍郷町内山中の3カ所で撮影)▽龍郷町内集落の屋外で生息するネコにGPS(全地球測位システム)を装着し行動パターンを調査(18年5月から約2カ月)▽奄美市名瀬大熊町住民との外ネコ調査(19年度4回開催)ーを主にまとめられている。

 自動撮影カメラでは、ネコも野生動物も同じ場所を移動していること、アマミノクロウサギなどの希少な野生動物は集落近くの林縁部も利用していること、集落内で捕獲されたノラネコの中には森林域にも出没している個体がいることが分かった。

 GPS調査では外飼いネコと人慣れしていないネコの2種類、11匹を対象に調査。個体によって行動パターンが大きく異なること、集落と山中を行き来しているネコがいることが判明した。

 19年度から新しい試みとして開催された大熊町の住民と行う外ネコ調査では、エリア分けした地域に人員を割り振り、担当エリアを40分間歩く。ネコを見つけたら写真に収め、場所を記録する作業を行った。そして撮った写真をもとに個体識別をし、目撃場所を地図に反映。地域をよく知る住民だからこその情報が得られ、適正飼育への啓発にもつながったという。

 同研究会の阿部会長は、「調査結果から、ノネコとノラネコの区分があいまいなことがより明確になった。希少種の多い地域では、個別の対応をしていく必要がある」と話した。

 ACNの久野代表は「ノネコの希少種捕食は、ネコではなく人間が起こした問題。同レポートをもとに、室内飼育の徹底などの適正飼育の推進をしていきたい」と展望を語った。

 また、同レポートは同研究会、(一社)奄美猫部のホームページからダウンロードできる。