台風10号接近に危機感

順調に生育しているものの、台風10号の被害が懸念されるサトウキビ(奄美市笠利町)

サトウキビ農家 折損や塩害被害懸念
「畑心配だが身の安全第一に」

強い台風10号は、今後、特別警報級の勢力まで発達し、6日から7日にかけて奄美地方に接近または上陸するおそれがある。奄美の基幹作物サトウキビは、ここまで順調な生育を見せているが、過去最強クラスの台風接近で、倒伏や折損、塩害など甚大な被害が出る恐れもあり、農家や製糖会社など関係者は不安を募らせている。

台風は3日午後、北西に進みながら発達を続けており、奄美地方に近づく6日が発達のピークと見られ、中心気圧は915ヘクトパスカル、最大瞬間風速は80㍍と予想されている。台風の進路に近い奄美大島や喜界島などでは、サトウキビなど農作物への被害も心配されている。

奄美大島さとうきび生産対策本部の今期の収穫面積は前年比9㌶減の533㌶となっているが、ここまで天候にも恵まれたことなどから生育状況もよく、平年並みの収穫が見込まれている。奄美市笠利総合支所地域農政課は「茎数は若干少ないが、伸びも良く単収も平年並みかそれ以上も期待できる状況。干ばつや塩害などの被害もなく品質も良好なだけに、台風の影響が心配される」としている。

同課は塩害対策として、農家に台風の通過前後に十分な散水を行うよう呼び掛けているが、「これだけ大きな台風の直撃を受けた場合、散水でどれだけの効果があるかわからない。対策にも限界がある」と話し、打つ手なしの状態だ。

奄美市笠利町の畑約8㌶でサトウキビを栽培する農家男性(37)は「予報通りだと直撃は避けられそうにない。順調に育っていただけに残念。畑も心配だが、建物や農機具への被害も心配」と話した。平年約420㌧を収穫するという男性は「今年は作付面積を減らしたものの平年並みの収量を見込んでいた」と言う。現在、夏植えの最中で、農機具などに被害があると、今後の農作業計画に影響が及ぶ可能性も。男性は「今回は、サトウキビの心配よりもまずは身の安全を第一に行動する必要があるかもしれない」と、最強クラスの台風接近に危機感を募らせていた。

喜界島の生和糖業㈱によると、喜界島のサトウキビも今期は生育良好で、糖度などの品質も平年以上の出来が期待されていたという。同社業務部は「台風の吹き返しの風で、折損などの被害が予想される。塩害と折損で、糖度が落ちるなど品質低下が気がかり。対策の取りようがなく、ここまで順調に生育していただけに、農家にとっても大きな打撃になるのは間違いない」と話した。