「津之輝」収穫開始

「津之輝」の収穫を開始した元井農園。着果状態が良く、収量の伸びが期待されている

住用・元井農園 糖度13度以上の高さ
「巣ごもり需要」対応、直販強化

 12月は新かんきつ「津之輝=つのかがやき=」の収穫シーズン。雨天続きでなかなか踏み込めない状況だったが、午前中は時折晴れ間がのぞいた8日、奄美市住用町の元井農園は収穫を開始した。収量が期待できる着果状態が良好な上、糖度が13度以上と高品質を誇る。コロナ禍での農産物の流通では、「巣ごもり需要」に対応できる直販を強化していく。

 タンカンに近い食味(果肉は柔軟多汁)、お歳暮需要がある年末に収穫できるのが魅力となっている津之輝。関係機関は栽培地として下場(平場)を中心に推進している中、元井農園も国道沿いの下場にある果樹園で栽培。津之輝植栽面積は約100㌃だが、このうち70㌃植栽している上役勝の果樹園で収穫をスタートした。

 「植栽して4年目だが、2回目の収穫を迎えることができた。植えて3年目には収穫でき、成木までの期間が短い(タンカンは一般的に5年)のは果樹経営の安定につながる。今期は二つの果樹園とも着果状態が良く、収量8㌧以上を見込んでいる」。収穫作業を開始しながら元井孝信さんは語った。品質も良好。糖度は11度以上を収穫の目安としている中で13度を超え、クエン酸の方は1・0を切り、酸切れが進んでいる。

 例年より果皮障害が多いものの、果実熟期前に発生し収量に影響を与える裂果は少ないという。元井農園では被害は出ていないが、ヤガ(夜蛾)が入り込み「果実の半分は落ちてしまった」という果樹園も存在。深刻な状況からヤガ対策として行政の支援を受け、試験的に忌避灯を導入している所もある。

 収量安定にはかいよう病対策も欠かせないが、根が浅いため園づくりでは防風垣整備が重要になる。防風樹種として元井農園では関係機関が推奨している「アデク」を導入、台風被害などから守っている。

 出荷は15日から予定。JAへの出荷(共販)のほか、流通を通さず生産者が直接消費者に届ける直販を強化する。ホームページもリニューアルし津之輝の魅力をわかりやすく伝え、SNSを活用して消費者への浸透に力を入れている。コロナ禍での農産物販売について元井さんは「巣ごもり需要に応える売り方を工夫したい。確かな商品を多くの人に届けたい」と語った。

 メモ

 津之輝 「清見」に「興津早生」を掛け合わせたかんきつに、「アンコール」を掛け合わせてできた品種。奄美大島では2010年以来、行政による苗木助成もあり栽培面積が増えつつあるが、水分管理が問われる裂果の発生のほか、防風対策など生産の安定が課題となっている