「奄美の人々の温かさに恩返し」

 奄美大島観光協会の越間会長(左)、JAC上村運航企画部長(右)とともに奄美新聞社を訪れた塩沢康太さん

高校修学旅行で初来島
塩沢さんJAC入社、副操縦士に

 7年前、東京の高校から修学旅行で初めて奄美大島を訪れた際、空港到着の際に奄美大島観光協会から熱烈な歓迎を受け、その後も行先で受けたおもてなしを思い出として刻み、「奄美の人々の温かさに恩返しがしたい」と離島路線を運航する日本エアコミューター(JAC)に入社したパイロットがいる。塩沢康太さん(24)。先月26日付でATR型機副操縦士の発令を受け、“離島の足”として奄美を支える。

 塩沢さんは東京都巣鴨出身。修学旅行で奄美を訪れたのは私立巣鴨高校2年の時(2013年4月)。1クラス単位で行先を決めることができ、東日本大震災から2年目ということもあり、生徒らは北よりも南の九州方面を希望。担任教諭の勧めがきっかけとなり、塩沢さんのクラス48人は奄美大島を選択した。

 「同じ南の島だが、沖縄ではなく奄美を選択して良かった。美しい海など沖縄と共通するかもしれないが、送り迎えなど人々の温かさは沖縄では感じることができなかったと思う」と塩沢さん。空港での歓迎に始まり、各行先で出会う奄美の人々がみな優しく、さらに「奄美空港を出発する際にも、観光協会のみなさんが見送りに来られ、飛行機が飛び立つまで手を振り続けていただいたことが、強烈な思い出として残った」。

 修学旅行で初めて乗ったプロペラ機、そして奄美での思い出。塩沢さんが「職業としてのパイロット」を目指す大きなきっかけとなり、高校卒業後、パイロット操縦士養成科のある熊本県の崇城大学に入学。4年間の学生生活、パイロットの基礎課程を取得する訓練生活の中でも常に奄美大島のことが頭にあり、「パイロットになるなら、ぜひ奄美の空を飛んで、あの時のお世話になった方々へ恩返しがしたいという思いがあったから、厳しい訓練も乗り越えることができた」と振り返る。

 大学で操縦士基礎課程資格を取得し、JAC採用試験に応募、難関を乗り越え合格し19年4月に入社した。採用を担当した上村徹運航企画部長は「百人近い応募があった。面接官を担当したが、履歴書に奄美のことが書いてあり、地元の航空会社のパイロットとして貢献したい、地域を支えたいという強い意識が採用を後押しした」と語る。

 採用後、半年間におよぶ地上研修等を終え、同年11月から副操縦士昇格訓練を開始。1年間の訓練を終え、昇格審査に合格し、副操縦士として今月から奄美群島の各島を結ぶ路線も担当している。7~8年後には機長を目標に掲げる塩沢さん。「修学旅行生など訪問者にはいつまでも記憶に残る奄美の良さを伝え、離島の足としては安全な運航を第一に奄美の人々を支える人材になりたい」と決意を語った。

 塩沢さんは9日、上村運航企画部長とともに奄美大島入り。修学旅行の思い出に残る地を再び訪ねたが、JACパイロットとしての恩返しのきっかけを作った奄美大島観光協会の越間得晴会長は「修学旅行として訪れる高校生らには一生の思い出になるよう、心からのおもてなしを心掛けている。そんな高校生の中から、こうして奄美路線を運航するJACのパイロットになる人材が誕生したことは最高の恩返し。コロナ禍で観光業界は厳しい状況が続くが、困難を乗り越える糧になる。とてもうれしく心強い」と喜んだ。