年末回顧①

新型コロナの感染拡大を受け、徳之島町では役場庁舎の消毒作業が行われた(12月1日)

「新型コロナ感染拡大」
与論、徳之島でクラスター発生

 今年も残すところあとわずか。2020年を振り返る時、一番の話題は言うまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大だろう。東京オリンピック・パラリンピックをはじめ、国内外の様々なイベントが中止や延期となった。今月発表された流行語大賞では「3密」が選ばれるなど、新型コロナ関連の言葉が並び、今年の漢字も「密」となるなど、まさに新型コロナ一色。観光などの地域経済や世界自然遺産登録、激戦となった知事選など、コロナ禍に見舞われた鹿児島、奄美の一年を分野ごとに振り返る。

 【学校休校】

 国内で新型コロナウイルスの感染が拡大したことを受け、文部科学省は2月28日、都道府県などに臨時休校に関する要請を通知。県教委は、県立高校などについて3月2日から15日まで一斉に臨時休校とすることを決定した。これを受け、群島内の小中学校でも同様の休校措置が広がった。また、卒業式は、感染防止の観点から出席者を制限、式典の時間短縮などの対応がとられた。

 【県内、奄美初感染】

 県内で初めて感染が確認されたのは3月26日。イギリス在住の40代女性が滞在先の姶良市で発熱、女性が立ち寄ったスーパーが一時休業するなどしたが、県民への感染拡大はなく、いったんは収束した。

 4月1日には、県内で2例目、奄美群島では初の感染者が和泊町で確認された。同町は緊急対策会議を開き、町民に「不要不急の外出自粛」を要請、濃厚接触者が19人に上ったこともあり、奄美群島全体に緊張が走った。その後、濃厚接触者全員の陰性が確認されるなど、感染拡大は免れたが、指定医療機関のない離島の医療体制やPCR検査した検体の輸送など、検査体制の脆弱性が浮き彫りとなった。

 【緊急事態宣言】

 政府は4月7日、感染が広がっていた東京、神奈川、大阪、福岡など7都府県を対象に緊急事態を宣言した。期間は大型連休明けの5月6日までで、対象地域では不要不急の外出自粛要請などが行われた。奄美と東京や大阪、福岡を結ぶ航空路線が運休となり、奄美の自治体では、7都道府県からの来島自粛を呼び掛けるメッセージが発表された。

 感染拡大が続くなか4月16日には、緊急事態宣言が全国に拡大された。さらに、翌17日には、奄美市で奄美大島初の感染者2人(県内5、6例目)の感染が確認される事態が発生、県は県内の小中高校、大学などすべての学校に5月6日までの休校を要請した。

 【クラスター】

 7月1日、鹿児島市天文館の飲食店で、県内で初めてのクラスター(感染者集団)が発生、最終的に116人もの感染者が出る大規模クラスターに発展した。

 同22日には、与論島でも県内4例目となるクラスターが発生。同島唯一の病院では県内初となる院内感染も確認され、看護師や入院患者らにも感染が広がった。このクラスターでは、島内の飲食店の会食で感染が確認され、杯で焼酎を回し飲む「与論献奉」が行われたことなども感染拡大の要因となった。8月7日に収束するまで、計56人が感染することとなった。

 7月に発生したクラスター収束から約3カ月後の11月3日、再び与論島でクラスターが発生。県は多くの感染が確認されたラウンジの店名を公表した。このクラスターに関連して、奄美大島や沖永良部にも感染が広がった。同島2例目のクラスター感染者は計57人に上り、7月と合わせた同島関連の感染者は113人となった。

 与論のクラスター収束もつかの間、12月1日には瀬戸内町で感染が確認された。さらに翌2日には徳之島町でも感染が発生した。徳之島の感染はその後も日を追うごとに増加、与論同様、会食が感染拡大につながったことが明らかになった。同島のクラスターは最終的に64人に達した。

 12月24日現在、県内で発生したクラスターは飲食店や高齢者施設、学校やサークル活動など計14例(560人)にのぼり、県全体の感染者数920人の約6割を占めている。

◇   ◇

 1年前、まさかここまで新型コロナの影響が大きくなるとはだれも想像できなかったのではないだろうか。奄美群島でも200人近い人が感染した。なかでもクラスターが発生した時の感染拡大の勢いは、予想以上だったように感じる。

 奄美の各島々では警戒レベルを作成、島民に警戒を呼び掛けている。街中を歩いていてもほとんどの人がマスクをするなど、感染対策もしっかりと行われているように思う。それでも、一瞬の気のゆるみが感染を広げてしまうことを、与論島や徳之島のクラスターは教えてくれた。

 年末年始は、島外からの帰省客も増え、飲酒を伴う会食の機会も多くなることが予想されるが、できるだけ大人数になることを避け、家族でだんらんを楽しむ程度にする必要がありそうだ。

(赤井孝和)