オオトラツグミの鳴き声の方角などを記録する調査員
NPO法人奄美野鳥の会(鳥飼久裕会長)は21日早朝、奄美中央林道などで、奄美大島のみに生息し、国の天然記念物に指定されている野鳥オオトラツグミのさえずり一斉調査を行った。同林道で確認されたさえずり数は98羽で前年比4羽減。同調査実行委員会委員長の高美喜男さんは「雨が降り条件は悪かったが、3年連続で100羽前後となり、数としては多めで安定している」と語った。
オオトラツグミは同島の深い常緑照葉樹林に生息し、全長約30㌢。全体的に暗めの黄褐色で、黒い大きなうろこ状斑が密にある。環境省のレッドリスト2020で絶滅危惧Ⅱ類(ⅤU)に指定されており、詳しい生態は不明。森林伐採や外来種による捕食等生息環境の悪化などにより個体数の減少が深刻化したが、徐々に個体数は回復しつつある。
同会は繁殖個体数の増減の記録や保護を呼び掛けるため、1994年から毎年、繁殖期の3月ごろさえずり調査を行っており、今回で28回目。オオトラツグミが繁殖期の夜明け前にほんの30分ほど鳴く習性を生かしている。確認数が最も多かったのは2016年の106羽。
今回は島内外から大学生7人を含む137人がボランティアで参加。うち、島内は122人だった。同会は「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で島外の参加者は減少したが、島内の参加者が増えたおかげで調査を滞りなく行うことができた」と説明した。
一斉調査を実施した奄美中央林道(約41・5㌔)では、名瀬・住用ルートの6班(里、金作原、川内、川神、神谷、赤土山)に分かれて、1㌔ごとに2、3人一組の調査員を配置。調査員はオオトラツグミが活動を開始する早朝5時半~同6時半の間に、林道2㌔を往復。道中で「キュロン」などのさえずりが聴こえたら、その方角や確認した地点、時刻を配布された地図に記入していく。
里班に参加した奄美市名瀬在住の松尾達郎さん(41)と竹山光子さん(44)は、往路1羽、復路2羽の計3羽を確認。松尾さんは「5回目の参加。今まででいちばん多く聴けた。マングースの減少により環境が良くなったのではないか」、竹山さんは「初めて参加したが、さえずりを聴けて感動した。聴き分けられるか心配だったが、大丈夫だった。これからもできるだけ参加したい」と話した。
同会の鳥飼会長は「28回積み上げてきて、本調査に対する島内の認識が高まっているのを感じている。奄美の自然の奥深さを体験し、『奄美ってすごいな』と思える、いいイベントを提供できていると思う」と語った。