県鳥ルリカケス 「種の保存へ」上野動物園で飼育

捕獲寸前のルリカケスのヒナ(提供写真)

クーラーボックスを改造した容器にひなを入れ、慎重に移送する(提供写真)

奄美大島から移送 今年は6羽のひな、順調に育つ
奄美野鳥の会が協力

 つい先日から、例年より少し遅れてアカショウビンの鳴き声が聞こえるようになった。10日から「愛鳥週間」が始まる。日本において野鳥保護思想普及のために鳥類保護連絡協議会が設けたもので、バードウイークともいう。野鳥に思いをはせるきっかけにしてはどうだろう。東京都の上野動物園には2021年5月現在、13羽のルリカケス(成鳥7羽、ひな6羽)が飼育されている。このうち10羽は奄美大島から連れてきた個体で、3羽は同動物園で繁殖した個体。飼育の目的はルリカケスの「種の保存」だ。

 ルリカケスは全長約38㌢、頭部から胸、翼、尾羽が青紫(瑠璃=るり=)色で、ほかは赤褐色。奄美大島・加計呂麻島・請島・枝手久島に分布し、森林や農耕地に生息。国の天然記念物、鹿児島県の県鳥に指定されている(『奄美の野鳥図鑑=奄美野鳥の会編』より)。

 同動物園は09年から、以前よりルリカケスの繁殖生態調査を行っていた東京大学、NPO法人奄美野鳥の会(鳥飼久裕会長)と協働し、「ルリカケスの域外保全・繁殖調査」を行っている。ルリカケスは世界で奄美群島のみに生息しているため、大災害や伝染病などにより絶滅する恐れがある。そのため、繁殖地から離れた場所で飼育増殖するのが「域外保全」だ。

 龍郷町に巣箱20個を設置し、見回りをしながらカメラで繁殖状況を確認。1羽のメスから生まれた2~5羽程度のひなのうち、最も小さい1個体(なるべく個体群に影響を与えないため)を生後2週間頃に捕獲する。そして、その日のうちに動物園に連れ帰り、検疫を行った後に、展示しながら飼育している。将来的には日本国内外の10施設以上で100羽程度のルリカケスを飼育し、万一の場合には奄美に戻す、という計画だ。20年11月には同動物園から鹿児島市の平川動物公園に2羽移送した。

 今年のひな移送は、2月末から3月末にかけて、ひなの成長タイミングに合わせて4回行われた。20個の巣箱中8個で産卵、うち5個でひなが成長したため、各1羽ずつ捕獲。他に保護された傷病個体1羽がいたため計6羽を、クーラーボックスを改造した容器に入れ、保温と脱水に注意しながら上野動物園に移送した。6羽は順調に育っているという。

 実はこれほど成功したのは6年ぶりで、15年に3羽移送して以来。営巣しない、カラス等の外敵に襲われる、抱卵放棄などが発生し、移送まで至るのはとても難易度が高いという。

 同活動に10年前から携わっている同会の永井弓子副会長(46)は「いかにルリカケス自体に影響を与えずに調査をするかに気を使っている。ひなが捕食される、卵を産んでも親が来なくなることもよくあり、自然の厳しさを感じる。6年間ダメな時期が続いていたので、今年は成功してとてもうれしい。これからも地道に続けていきたい」と語った。