亡き夫が残したナシの木 白い花が満開に

田川さんの果樹園で白い花が満開となっているナシの木

奄美市笠利町の田川さん果樹園

 奄美市笠利町里の田川道代さん(77)の果樹園でナシの白い花が満開となっている。15年前、63歳で亡くなった夫の博秀さんが植えたもので、10年ほど前から毎年、この時期に花を咲かせている。田川さんは「今年は例年になく、たくさんの花が咲いた。夫との思い出と一緒に、これからも大切に育てていきたい」と話している。

 同市の金融機関に勤めていた博秀さんは、定年後に夫婦で農業をすることを楽しみにしていたといい、定年を迎える数年前から鹿児島市の木市などで購入したライチやナシ、バナナなど様々な果物の苗木を植え育てた。

 60歳で定年を迎えると、同市名瀬の自宅から毎日、1時間ほどかけて同町の果樹園に通い、草刈りなどをして苗木が成長するのを楽しみにしていたという。しかし、肺がんを患い、苗木の成長を見届けることなく亡くなった。生前、ナシの木は一度も花を咲かすことはなかった。

 ナシの花が咲くようになったのは、博秀さんが亡くなって5年ほど経ってからのことだった。田川さんは「奄美の気候に合わないのだろうとあきらめていたが、土の下でしっかりと根を張っていた。ようやくこの場所になじんだのでしょう」と話す。

 以後、毎年のように花が咲き、数年前からは、秋になると直径10㌢ほどの立派な実もつけるようになった。「甘酸っぱくて意外とおいしいですよ。友人や近所の人たちも、実がなるのを楽しみにしてくれています」と田川さん。

 畑には現在、ポンカンやタンカン、津之輝、レモン、サワーポメロなどかんきつ類を中心に80本ほどの果樹が植えられており、四季折々に色とりどりの花や実を付けている。田川さんは「一緒に農業を楽しむことはできなかったが、夫が残してくれた果物たちに囲まれた暮らしは幸せです」と笑顔で話した。