「浮いた気持ち」突かれる

大島・大野稼頭央
センバツ・熱球譜

 

 

 調子は悪くなかった。直球、カーブ、スライダー、冬場で磨いたチェンジアップ…どの球種も「通用する」手応えはあった。

 反省しているのは「ボールが高めに浮いてしまったこと」。憧れだった甲子園のマウンドで投げられる喜びで、試合前は「緊張よりもワクワクしていた」。大会前の調子も良く、張り切っていた分「気持ちが浮いていた」のが、微妙にボールにも伝わってしまった。

 明秀日立は、関東王者らしい手ごわい相手だった。県や九州大会なら空振りや、見逃しで打ち取れたボールも、しつこくカットして食らいついてくる。少しでも浮いて、甘くなったボールは逃さなかった。丁寧に低めを突く「自分らしい投球」が序盤できなかったことが悔やまれた。

 後半は気持ちを切り替え、低めを丁寧に集められたことで、それ以上の追加点を与えなかった。序盤、味方の守備のミスもあったが気にすることなく、打者に向かっていく投球はできた。

 初めての甲子園のマウンドは「とても投げやすかった」と感じた。8年前、小学生の頃、21世紀枠で出た大高の野球をアルプスで見て以来、あこがれていた場所に実際に立てた。マウンドの傾斜、土の感覚…想像した以上に「また投げてみたい」と思わせる甘美な魅力を味わうことはできた。ただ、思い描いた結果を出せなかった分「もっと力をつけて、また夏帰ってくる!」。そんな気持ちがメラメラとわいてきた。
                           (政純一郎)