大島、出水中央に劇勝

【準々決勝・出水中央―大島】9回裏大島二死一二塁、8番・美島がサヨナラの中前適時打を放つ=平和リース

8番・美島がサヨナラ打
夏高校野球第13、14日

 【鹿児島】第104回全国高校野球選手権鹿児島大会第13、14日は17、18日、鹿児島市の平和リース球場で準々決勝4試合があった。

 奄美勢の大島が出水中央と対戦。劣勢の展開が続いた中、九回裏、一死から同点に追いつき、8番・美島の中前適時打で劇的な逆転サヨナラ勝ちし、夏の大会初の4強入りを決めた。

 第15日は22日、同球場で準決勝2試合がある。大島は第3シード国分中央と対戦する。

 【評】序盤で2点を先取した大島だったが、三―六回と毎回失点し逆転を許す。七回裏、二死から3連続二塁打を浴びせ、3番・武田、4番・西田の連続適時打で同点に追いつく。八回表に再び2点を勝ち越されたが九回裏、一死から3番・武田が四球を選び、4番・西田、5番・中が連打で満塁とする。6番・体岡が押出し四球を選んで1点差。7番・青木の犠飛で同点に追いつき、8番・美島の中前適時打で逆転サヨナラ勝ちし、2時間32分の死闘を制した。

良くも悪くも「自分たちの野球」 大島

【準々決勝・出水中央―大島】サヨナラのホームを踏んだ中(8)のもとに駆け寄る大島ナイン=平和リース

 

 大島は良くも悪くも「自分たちの野球」(塗木哲哉監督)を出し尽くして、夏の大会初の4強入りを勝ち取った。

 エース大野が打たれる。エラーが失点につながる。ヒットは出るのに打線がつながらない。果敢な走塁が裏目に出てアウトになる…三回以降は攻守の悪循環を断ち切れず完全な「負けパターン」(塗木監督)の展開だった。

 今年も夏は8強より先には進めないのかと思われたが、今年の大島ナインは一味違った。

 失点はしても、次走者をアウトにとり、1イニング1点以上の失点を許さなかった。何より「誰1人気持ちで負けている選手がいなかった」と武田涼雅主将。この試合のベンチリーダーは18番の青木蓮だったが「自分がリーダーの試合で負けたくなかった。良い声を出してベンチを盛り上げた」という。

 2桁背番号の選手は流れを変えるのが仕事。中盤の悪い流れを、六回に代打で出た体岡や青木がヒットを放って断ち切った。「打撃好調だったので自分に絶対回ってこいと念じていた」(青木)。

 2点差を追いかける九回、先頭の大野が中飛で倒れた後、全員がつないで逆転した姿はまさに「大野を打って助ける」(青木)野球だった。8番・美島は「意外性の男」(塗木監督)が持ち味。今大会打撃好調で、この試合では四回の守備で身体を痛めても懸命に守り、打席で粘る姿があった。そんな美島が最後に締めくくりの適時打を放ったのは、もはや「意外」ではなかった。
(政純一郎)

「大野を助けたい!」
頼れる主将の復活劇 大島・武田涼雅主将

 

 初回の先制二塁打、七回は3点目となる適時二塁打。久々に3番に復帰し、打撃で結果を出した。頼れる主将の復活劇だった。

 ずっと打てなくて悩んでいた。打順はいつの間にか6番が定位置になっていた。3回戦の鹿児島商戦あたりから、本来の思い切りの良い打撃は戻ってきた。

 「大野を打って助けたい!」

 その一念のみで復調した。昨秋の県大会、九州大会、センバツ、春の九州大会…ことあるごとに「いつも(大野)稼頭央におんぶに抱っこだから、今度こそ打って助けたい」と意気込みで語っていながら、一度も実践できなかった。

 九回裏、その大野が倒れた後に打席に立った。変化球を2球見逃し、瞬く間に追い込まれた。「正直打てる気がしなかった」。センバツの最後の打席のようにノーステップで打とうかと思ったが、一塁コーチャーの竹山が満面の笑顔でいる姿を見て、気持ちが落ち着いた。自分らしく思い切りいこうと吹っ切れた。

 不思議とボールがよく見えるようになり、四球を選んで出塁。そこからの集中打は「稼頭央を助けたい」自分の一念が、ナイン全員にも乗り移って生まれたように思えた。

 過去のどの代の先輩も成し遂げられなかった夏の4強入り。「うれしいけれども自分たちの目標はそこじゃない」と言い切る。センバツでは明秀日立(茨城)の前に何もできずに敗れ去った。「借りを返したい!」気持ちは誰よりも強い。そのために、この大会を勝ち切るまで、気は緩めない。
(政純一郎)