「津之輝」早取出回る

11月で地元市場に入荷した「津之輝」。外観からも未完熟、早取りが判断できる

 

 

「産地づくり妨げる行為」
お歳暮需要見込む新かんきつ

 

 年内で収穫できる「津之輝=つのかがやき=」(新かんきつ)は、果樹のタンカンに近い食味があることから、贈答用としてお歳暮需要が見込める。生産農家は12月に入ってから収穫を開始するが、11月中旬から地元市場に出回っている。早取りのため外観の色が乗っておらず、完熟には程遠い状態。農家からは「産地づくりを妨げる行為。未熟果が流通すると価値を下げてしまう」と憤りの声が上がっている。

 名瀬中央青果に津之輝が入荷するようになったのは11月10日から。日量20~30㌔がほぼ毎日続き、奄美市の名瀬地区や住用地区、大和村などから出荷されたという。キロ当たり単価は高値で660円など500~700円台となることもあったが、セリで値段をつける仲買人の「まだ早い」との受け止めもあり、11月終盤は400円台まで下がった。

 JAあまみ大島事業本部では部会員を対象に津之輝の品質調査を10月から月一回行っている。品質(糖度やクエン酸)の分析で収穫適期を探るため。JAは「11月は18日に果実分析を行ったが、酸切れは早いもののまだ完熟していない。気温が高いため外観の紅も乗っていない」と指摘する。収穫時期について「津之輝は12月に入ってから収穫し、4~5日程度予措=よそ=(果皮を乾燥させるための貯蔵方法)をかけることで本来のおいしさが出る。収穫適期を認識してほしい」とJAは呼び掛ける。

 住用地区にある元井農園では津之輝を約100㌃植栽している。下場(平場)での栽培が可能なため、国道沿いに果樹園がある。元井孝信さん(66)は「天候状態が左右するが、来週にも収穫開始の予定。クエン酸は0・95%と1・0%台を切るようになった。外観・品質の状況を判断して収穫していく」と語り、11月中旬から地元市場に出回っていることについて「この品種は12月に入ってから収穫するもの。農家を助けるおいしいミカンであり、早取りでは津之輝の特性(糖度が高くジューシーで、軟らかくゼリーのようなプチっとした果肉)は出ない。市場に入荷したものが青果店で販売され、観光で訪れた旅行者が購入すると『珍しいが、おいしくないミカン』という悪いイメージにつながってしまう。産地づくりを邪魔する、足かせとなる行為」と憤る。

 タンカンのような食味から消費者に好まれ、時期的に贈答用の需要が期待できるとして奄美大島では津之輝の栽培面積が増えている。JAの共販でも中心となるかんきつとの位置付けだ。早取りについて県大島支庁農政普及課は「温度が高いだけに減酸は順調(栽培地によっては懸念も)だが、外観の色が乗り切れていないだけに問題。タンカンは2月以降の収穫が定着している。津之輝も早取りを防ぐルールづくりが必要ではないか。関係機関で議論したい」としている。