熟年世代、黒糖づくり懐かしむ

「フットパス」体験イベントの可能性も探り、昔を懐かしんだ参加者たち=17日、伊仙町伊仙

「フットパス」体験型可能性は?
伊仙町 キビ汁煮沸して香ばしく

 【徳之島】「世界自然遺産の島でのフットパスに、黒砂糖づくりの体験型イベントの可能性は?」―。伊仙町伊仙(御前堂)の民泊施設「星の宿り」で17日、熟年組の有志たちが昔懐かしい「サタタキ」(黒砂糖づくり)を体験。可能性の試行と併せて、幼少期の思い出に浸りあうなど感動を分かち合った。

 発起人は、生家のある敷地内に「星の宿り」を開設した元会社員の嶺山兼人さん(68)=大阪府和泉市在住=を中心とした有志たち。ありのままの自然や風景を楽しみながら歩く「フットパス」普及団体代表らの「散策プラス体験イベントも大事」などのアドバイスがきっかけに。

 同島の伝統的基幹産業の黒糖づくりは、分蜜糖の大型製糖工場が進出する昭和30年代半ばごろまで、島内各地で家内工業的に盛んに行われた。しかし、現在の60~70歳代も今となっては昔ながら「サタタキ」経験は皆無に等しい。意外にも、総合的な学習の時間などで体験活動する現代っ子らよりも体験機会に恵まれず、幼少期の懐古材料にとどまっているのが現状とも。

 原料のサトウキビは地元の清則夫さん(67)が提供し、嶺山さんらが前日に手作業で332㌔を収穫した。17日午前、県農業開発総合センター徳之島支場(面縄)の協力で圧搾(約2百㍑)。同日午後、サタタキ技術伝承者の同町中山の宮重友さん(83)の指導で、大なべ2基を使い約2時間ずつ計2回、キビ汁を煮沸して香ばしい黒糖に仕上げた。

 宮さんは「一番難しいことは、糖度などキビ原料の品質で条件が微妙に違う火加減や生石灰(凝固用のPH調整)混入量。今の60、70代もほとんど経験がない。今のうちに若い世代に引き継げたらと思う」。

 熟年世代を中心に約30人が見学を兼ねて応援。徳之島町亀徳から駆け付けた主婦(66)は「昔は近所にも黒糖の製糖工場があり、大鍋のガンザタ(キャラメル状の黒糖)をキビに絡めてもらい、頬を汚しながら食べたことが懐かしい。黒糖祭り(徳之島町)でも見る機会はあるが、この技術は残して欲しい」と懐かしんだ。

 嶺山さんは「体験型イベントへの可能性・反応を探りたい」。清さんも「大変だったが、参加者のみんなが感動してくれてうれしい」と満足そうに話した。